どんな職業でも、何も教えられずにいきなりその仕事をできるわけではありません。教育が必要です。会社は、新しく従業員を雇用したら、その従業員が仕事を身に付け、育っていくように教育しなければいけません。従業員が仕事できなければ、会社の発展、どころか存続がありませんから。
従業員を教育し、人材として育てることを人材育成と言います。
従業員としてもきちんとした教育を受けることができず、いつまでも仕事を覚えることができなければ、自分の能力を十分に発揮できないばかりか、自分は会社に大事にされていないと思ってしまうでしょう。人材育成が不十分な場合、その会社の離職率は高くなるに違いありません。
人材育成はとても重要です。トラックドライバーとて同様です。昭和アナログな「仕事は見て覚えろ」はとても非効率です。
1. 安全教育
トラックドライバーの仕事の大半はトラックを運転して荷を運ぶことです。そのため、常に交通事故のリスクにさらされています。
トラックドライバーに限らず、あらゆるドライバーは交通事故を絶対に避けなければいけませんから、安全教育はとても大切です。
若いドライバーには「交通事故が起こりやすい状況」「交通事故が及ぼす影響」などを教え、ベテランには「慣れによる油断の恐ろしさ」などを教え、安全運転意識を高める教育をしなければいけません。
2. プロとしての心構え
トラックドライバーに必要なのは「やる気」「責任感」「運転免許」です。
中でも「責任感」は、「荷の安全」「安全運転」を守るために必要です。
また、トラックドライバーは荷を運ぶことで人々の生活、企業の経済活動を支える、社会貢献度の高い職業です。
そんな社会貢献度の高い仕事をやり遂げ、「荷の安全」も「安全運転」もしっかり守るよう、プロドライバーとしての心構えをしっかり教えましょう。
それだけではありません。プロとして働く以上、社会人としてのマナー、モラルも大切です。日ごろから身なりを清潔にし、荷の積下ろし先などできちんとあいさつできるように教えるのも、心構えの教育です。
プロは、いつも自社の看板を背負って仕事をするのです。
3. トラックの構造
トラックドライバーが安全運転をやり遂げるのに必要なのが、トラックが万全に機能するように車両整備を怠らないことです。また、トラックが不調をきたすような運転操作も避けなければいけませんし、運転中にトラックの不調にも気付けるようになる必要があります。
そのためにも必要なのが、トラックの構造や特性の理解です。
4. 荷の積み方
トラックドライバーの仕事の大半はトラックの運転ですが、ただ単に運転するだけではありません。荷を積んで、その荷を安全に運ばなければいけないのです。運転中に荷崩れを起こして荷が破損したりしてはいけないわけです。
そんなわけで、荷が荷崩れを起こさないような荷の積み方を理解していなければいけません。荷を荷台に乗せる作業は、倉庫などのスタッフが行うにしても、安全な荷の積み方を分かっていなければ、荷の安全は確保できないでしょう。
また、積んだ荷を、数か所で下ろす場合、効率的に下ろせるよう、あらかじめ下ろす順番を考慮した積み方をする必要もあります。最初に荷を下ろす場所で下ろす荷なのに、一番奥に積んでしまってはすぐに下ろすことはできません。
5. 自己管理
トラックドライバーが安全運転をやり遂げるのに必要なのが、ドライバー自身の体調が万全であることです。ドライバーの体調が不良の場合、交通事故のリスクが爆上がりします。
そんなわけで、トラックドライバーは自分の健康管理を徹底して行う必要があります。
また、トラックドライバーは何があっても冷静にトラックを運転しなければいけません。怒りやすいと、ちょっとしたことでカッとなり、危険運転やあおり運転をしてしまうかもしれません。トラックドライバーは運転中、何があっても冷静でいられるよう、自己を管理しなければいけないのです。
それができないなら、即刻トラックドライバーを辞めましょう。
6. トラブルの対処
人間にミスはつきものです。
トラックドライバーがいくら車両の状態や自己の健康を万全にしていても、何かしらのトラブルが起こることもあります。道路上では、いろいろな車がそれぞれの事情や状態で走っていますから、想定外のことが起こりがちなのです。
しかし、そうしたトラブルにも臨機応変に、冷静に対処し、トラブルが拡大したり、連鎖反応を起こして事故につながるような事態は避けなければいけません。
また、仮に事故が起こってしまったとしても、被害を最小限に食い止めるため、警察や救急に連絡するなど、迅速に行動しなければいけません。
会社としてはいろいろなトラブルを想定し、それぞれ対処の仕方をしっかり従業員に教えましょう。そしてその基本的な対処法を、想定外のトラブルの対処に臨機応変に生かせるように教育しなければいけないのです。
7. 法律やルールの理解
車を道路で運転すること、トラックで荷を運ぶことなどには、いろいろと法で決められたルールがあります。トラックドライバーはそのルールを守って仕事しなければいけません。
ルールを守るためには、もちろんその法律を正しく理解し、覚えておく必要があります。
トラックドライバーが知っておくべきルールは、運転に関することだけではありません。例えばトラックが積める荷の重さも、トラックの重さによってそれぞれ決まりがあります。この決まりを超えて荷を積むと、過積載となり、法律を破ることになりますが、安全面でも大きな危険を冒すことになります。
法律だけではなく、勤務している会社独自のルールもあるはずです。しっかり守って交通安全に努めましょう。
8. カリキュラムの作成
トラックドライバーを育成するには、教えるべきいろいろなことがあります。この教えるべきことが、教える教育担当者によってバラバラになってしまうと、会社として提供するサービスの質がバラバラになってしまいます。
人材育成のためのカリキュラムとして整備し、誰が教えても内容に漏れのないようにしたほうが効率的です。
零細・中小企業では、なかなか教育や人材育成に費用、時間を割ている余裕はないかもしれません。だからこそ、カリキュラムとして整備し、効率的にまんべんなく教育できるようにしておかないと、人材はなかなか育っていかないかもしれません。
9. 指導員向けマニュアルの作成
カリキュラムの整備とともに必要なのが、教育係の育成です。
昭和の昔は、多くの会社で新入社員の教育は親切ていねいではなく、上司や先輩社員が「俺の背中を見て学べ」なんてことを言い、新入社員は放ったらかしでした。
そうした昭和のやり方は今の時代にそぐわない、かどうかは別にして、とても非効率ですし、会社が提供するサービスの質を高める一助にもなりません。
零細・中小企業がお金や時間がないなりに、きちんと人材を育成するためには、きちんとしたカリキュラムを作成し、それを従業員に伝える教育係をきちんと育成しなければいけません。
そのために必要なのが、教育係向けマニュアルです。
お金や時間がない場合でも、カリキュラムやマニュアルの作成にはきちんと専門家に依頼したほうが良いかもしれません。
教育レベルを上げてしっかり人材育成に力を入れると、従業員の定着率も上がり、会社の信用度も上がるでしょう。
10. キャリア形成
人材育成でとても重要なのが、従業員が目標を持てるようにすることです。すなわち、従業員のキャリア形成の道筋を示すことです。
トラックドライバーにもキャリアアップがあります。最初は中型トラックの運転から始まり、大型運転免許を取得して長距離の仕事をするようになるのもキャリアアップですし、運行管理者の資格を取って管理職になるのもキャリアアップです。
トラックドライバーとして仕事を続けていく上でのキャリア形成を示すことで、従業員は目標を持って仕事を続けることができるようになります。