ドライバーは「男の仕事」というイメージがありましたが、力仕事と思われがちなトラックドライバーでさえ、女性がそれほど珍しくなくなってきました。
タクシードライバーも昔は男性の専業で、見知らぬ男性と密室で2人きりになることもあって「女性に向かない」とのイメージがありました。
しかしそれも「遠い昔、はるか彼方の銀河」の話であって、東京都ではこの25年で女性タクシードライバーの数が約1000人急増している、なんて数字も挙がっています。「女タクシードライバーの事件日誌」なんて2時間ドラマのシリーズもありましたよね。女性タクシードライバーという存在自体が「普通」になったのです。現実社会では、ドライバーが全員女性というタクシー会社もあるほどです。
今回は、女性タクシードライバーが増えている理由10選をご紹介します。
1. 子育てと両立しやすい
タクシードライバーの仕事は柔軟な労働時間の設定が可能で、子育て中でも子どもの登校時間、下校時間などの生活スケジュールに合わせて出勤を決めることができます。男性のタクシードライバーの中にも、副業としてタクシードライバーの仕事をしている人がいるそうです。
子育てしながら仕事をして家計の足しにしたい、社会とのつながりを持ちたいと考える女性の多くが、女性タクシードライバーとして働く選択をします。
2. タクシードライバーの仕事は接客が重要
タクシードライバーの仕事では運転もさることながら、接客が重要な、欠かせないスキルとなります。
この接客力やコミュニケーション力は、本質的に男性より女性のほうが高い傾向があり、そのためタクシードライバーの仕事には女性のほうが向いているとも言えます。きめ細やかな接客ができる女性タクシードライバーがタクシー業界から歓迎されています。
3. 細やかな運転が安心できる
女性はクルマの運転が下手だという偏見が根強くありました。
実際には男性にもクルマの運転が下手な人はいます。それに、タクシードライバーに限らず、特別に高度な運転技術が必要なカーレーサーにも女性はいるほど、クルマを運転する職業に就く女性が増えています。
タクシーはもちろんレーシングカーではありません。求められるのはスピードではなく、安全運転です。女性タクシードライバーは細やかな気遣いで、ていねいで安心感のある運転をします。
4. ドライバー業界が人材不足
タクシー業界に限らず、ドライバー業界全体が深刻な人材不足に陥っています。
そのため、ドライバーとして仕事を得るハードルが低いので「働きたい」という強い意志と「運転が好き」というクルマへの愛、そして運転免許があれば誰でもドライバーの職を得ることができます。
5. お客さんの受けが良い
女性タクシードライバーは増えているとはいえ、まだまだタクシードライバー全体での割合は少なく「タクシーはたまに利用するくらい」という人は滅多に女性タクシードライバーにお目にかかりません。
それでもたまたま女性タクシードライバーに巡り合った人は、接客がていねいで、運転がていねいな女性タクシードライバーのタクシーにもう一度乗りたいと思います。女性のお客さんは特に、女性タクシードライバーに強い安心感を抱きます。
6. 車載カメラなどセキュリティの充実
タクシードライバーはタクシーという密室で乗客と2人きりになることもあり、それを不安に感じる女性もいます。酔客にからまれることもあります。
ただ、不埒なお客が乗りがちな地域、時間帯を避ければ、不埒なお客と遭遇する確率も低くなります。また、今は車載カメラもありますから、タクシードライバーの安全は以前より守られていると言えます。
7. 国土交通省が女性ドライバー増加に取り組んでいる
国土交通省がタクシー業界での人材不足解消に向け、女性ドライバーの数を2013年度から2020年度にかけて倍増(約6,700人→約14,000人)するために「女性ドライバー応援企業」認定制度を創設しました。
つまり、女性ドライバーの採用に向けた取り組みや、子育て中の女性が働き続けることのできる環境整備を行っている事業者を、国をあげて支援・PRしていくということです。
タクシー業界のことや、現役ママさんドライバーの声などを掲載した「ママLOVESタクシー」というフリーペーパーも発行し、仕事を探している女性にもタクシードライバーの仕事をPRしています。
8. キッズタクシーなどの新サービスに向いている
タクシー業界ではキッズタクシー、福祉タクシー、介護タクシーといった、幅広い接客サービスを取り入れた事業も始まっています。
キッズタクシーは学校・塾・自宅間をドアtoドアで送迎する、固定の担当乗務員によるサービスです。キッズタクシーに乗車する子どもには、子育て経験のある女性タクシードライバーが好まれる傾向があるようです。
身体障がい者を送迎する福祉タクシー、介護の資格を持ち、身体障がい者を介助して送迎する介護タクシーでも、女性タクシードライバーの、ていねいできめ細かい対応が喜ばれています。
9. 女性タクシードライバー採用に力を入れる会社の増加
タクシー会社に限らず、ドライバー業界全体が深刻な人材不足に陥っています。
また、国土交通省が「女性ドライバー応援企業」認定制度を創設し、女性ドライバーの採用に向けた取り組みや、子育て中の女性が働き続けることのできる環境整備を行っている事業者を支援・PRしています。そのため、多くのタクシー会社が、女性が働きやすいように労働環境を整備し、タクシー会社にとって救世主となる女性タクシードライバーの採用に力を入れるようになりました。
10. ドライバー業界全体の変化
日本史の「近代・現代」は高校の授業では駆け足になり、ほとんど記憶に残りませんが、それでも日本の社会はこの100年で大きく変化を遂げてきました。封建主義的な帝国主義から民主主義に変わり、女性の社会進出も進んできました。
日本人は偏見に満ちているのでまだまだ不完全ですが、男性による職業の独占も減ってきています。タクシーだけに限らず、トラック、ダンプを運転する女性ドライバーも確実に増えてきています。今後もこの傾向は続き、女性タクシードライバーは増え続けるでしょう。