トラックドライバーの業界は近年、労働環境の改善が進んでいます。
「改善が進んでいる」ということは、もともと「改善」が必要な業界だったわけで、しかも現在も「改善が進んでいる」ので、すっかり改善できたわけではありません。
トラック輸送の歴史は古く、その分、古い慣習が今も残っているわけです。そしてこれが弊害となってトラックドライバーの人手不足が起こり、さらにそれが取沙汰されるようになってようやく改善が始まったのです。
「トラックドライバーの仕事は過酷」というイメージが広がっています。その要因の1つになっているのが、荷待ち時間です。
トラックドライバーは荷主、つまり荷の持ち主からジャストインタイムで荷を届けるように指示されます。
例えば、ある製品の部品を工場まで届ける場合、午前9時から組み立て作業を行うので、午前9時ぴったりに持って来いとなります。これがジャストインタイム生産システムというやつで「各工程に必要なものを、必要なときに、必要な量だけ供給する」というやり方です。なるほど、効率的なような気がします。
そのため、トラックドライバーは指定時間に遅刻が許されないばかりか、早く着き過ぎても待たされることになります。
さらに、時間ぴったりに着いても、そうやって集まってくる他のトラックもありますから、結局は待たされることになります。何しろ、荷を降ろすのも30分~1時間くらいはかかりますから。
これが世に言う「荷待ち時間」です。
そんなわけで国土交通省の旗振りで進めることになったのが、運送業界の労働環境を改善しようという「ホワイト物流推進運動」で、この中で荷主企業、納品先企業に対して「荷待ち時間の削減への取り組み」を要請しています。実際、改善も進んでいます。
ただ、今のところ、まだ荷待ち時間が完全に削減されたわけではありません。
そこで今回は、この荷待ち時間の過ごし方をいくつかご提案します。もちろん、ベテランのドライバーの人たちはすでに自分なりに工夫して過ごしているとは思いますが、老婆心ながら紹介いたします。あくまでも老婆心です。
1. 寝る
荷待ちは、夜通しトラックを走らせ、工場や倉庫、会社など、届け先が朝、始業する時間に合わせて到着して発生することが多いです。
その場合、トラックドライバーは徹夜してトラックを運転してきます。届け先に着く前に2~3時間は仮眠を取るとは思いますが、それでもまだ眠いかもしれません。そんな多くのトラックドライバーは、やはり目をつぶって疲れを取る時間にするようです。
もちろん、ここで爆睡して納品時間に遅れたりしたら何にもなりませんが。
2. 音楽を聞く
荷待ち時間は、扱いとしては業務上の拘束時間です。とは言え、ここで「これをやれ」という業務規程はありません。待っていればいいのです。
言い換えると「自由に過ごしていい」わけです。
というわけで、音楽好きな人は、好きな音楽を聞いて過ごしたりします。音楽はスマホでもラジオでも、ポータブルCDプレーヤーをトラックに持ち込んででも、いろいろ聞いて楽しむ方法があります。
カラオケを聞きながら自分で歌うのもアリです。
3. 動画を見る
スマホがあれば、いろいろな動画を見ることもできます。ただ、スマホだと動画再生にも制限があったりして、それを気にしながらだと心行くまで楽しめないかもしれません。
そんな人は動画無制限にしておくか、DVDソフトを楽しめるポータブルDVDプレイヤーをトラックに持ち込んだりしましょう。
映画でもドラマでも、人気YouTuberの動画でも、音楽ライブ、ニュース、落語、文楽、能、狂言、オペラ、スポーツと、何でも楽しめます。日本語字幕はありませんが、日本では未公開のヨーロッパ映画だってアップされていたりします。
4. ゲームをする
スマホがあれば、ゲームもできます。
無料でダウンロードできるゲームアプリもあれば、有料アプリもあります。無料ゲームでも、課金システムでいろいろなアイテムなんかが手に入って、ゲームをより面白く楽しめたりもします。
ハマると、結構お金を使っちゃうことになるかもしれないので、気をつけて。
5. SNSで交流する
これまたスマホがあれば、どこでも誰とでもつながることができる時代です。
チャットでもラインでもメールでもツィッターでも使い、家族、友人知人、ドライバー仲間、親戚、同窓生、ライバル、恋人と交流しましょう。もちろん、電話で通話するのもアリです。
昔ながらの無線をトラックに設置し、無線仲間と話すのも情緒があってイイでしょう。
6. 読書する
スマホで電子書籍を読むこともできますし、もちろん、実際に紙の書籍を持参してページをめくるのも、とても素敵な時間の過ごし方です。
読むのは小説でもビジネス書でも法律書でも趣味の書でも辞典でもマンガでも何でもいいでしょう。
本を読むと、心が軽くなったり、逆に人生や社会に関して深く考えたり、ためになる知識を身に着けたり、教養を深めたりできます。
軽い読み物なら、音楽を聞きながらでも読めます。また、静かな曲を聞きながらなら、重い内容の本でもかえってその内容に入り込み、熟読できるかもしれません。
7. 勉強する
ただ本を読むだけじゃなく、荷待ち時間を勉強時間とすると、とても有意義な時間の過ごし方になります。
外国語やビジネス、歴史、経済、医学など、本によっていろいろな勉強ができます。勉強すると、視野も広がり、人生の選択肢も増えます。
具体的に資格を取るための勉強をするのもいいでしょう。
勉強法は本を読むだけではありません。YouTubeでもいろいろな講座がアップされていますし、市販の英会話など各種講座のCD、DVDをポータブルプレイヤーで再生し、勉強することができます。
いろいろ勉強すれば、副収入を得る方法なんかが見つかるかもしれませんよ。
8. 瞑想する
エンターテイメントや勉強やら、そんな面倒なことはしたくないし、下手に眠って寝過ごすのも不安だという人は、瞑想してみるのもいいでしょう。
瞑想は、目を閉じて深く静かに呼吸し、無心になることです。
世の中にはさまざまな瞑想のやり方、瞑想の目的があるようですが、そういう面倒くさいことは脇に置き、とにかく心を静めるようにしましょう。
呼吸が整うことで健康維持に役立つ、かもしれませんし、冷静になることで安全運転に集中できる、かもしれませんし、悟りの境地に達して宇宙の真理が分かる、かもしれません。
周囲の雑音が聞こえなくなれば成功じゃないでしょうか。眠くなるかもしれませんが。
9. 妄想する
スマホが電池切れだったとか、いつも読んでいる本を忘れたとか、ポータブルプレイヤーが故障してたとか、荷待ち時間を有効に過ごすお役立ちアイテムが使えなかったとしても大丈夫です。
何も道具がなくても、人には妄想力があります。想像力と言ってもいいでしょう。
いろいろ妄想して過ごしましょう。いじめっ子だったかつての同級生をぶん殴るのを妄想したり、片思いのあの子に告白してOKしてもらったりするところを妄想してもいいです。今一番食べたい料理を食べるところ、好きなコミックを、好きな芸能人をキャスティングして映像化するところ、好きなドラマの主人公を自分が演じているところなど、妄想なので自分の思うがまま、いくらでも好きにできます。
妄想なのでお金もかからず、何の制限もありません。
10. 何もしない
眠くもなく、スマホもあるし、本もあるし、ポータブルプレイヤーもあるし、想像力もあるけど、あえて何もしないという選択肢もあります。
いわゆる「ボーッと過ごす」のです。何かするのが面倒くさいという人にはうってつけです。実はとても贅沢な時間の過ごし方かも。