あらゆる仕事には「お客さん」というものがあります。サービスや品物に対してお金を払う存在です。
仕事をする人間にとって、お金はとても大切なので、その大切なお金を払ってくれる「お客さん」をとてもありがたがる風潮があります。
決してそれ自体は悪いことではないのですが、その「ありがたい」という気持ちによって上下関係ができてしまうのはいかがなものかと思います。上下関係は人間関係をいびつにしてしまいます。
それはともかく「お客さん」が存在する仕事には「クレーム」というものもあります。「クレーム」は、お客さんが上下関係を強く意識する仕事である接客業で、特に頻繁に起こる可能性があります。
そんなわけで、接客業でもあるタクシードライバー業界にもクレームが発生します。
もちろん「お客さんもちょっとのことでクレームなんて言わなくてもいいんじゃない」ということではありません。サービスを利用する側にも、クレームを入れる権利があります。
そんなわけで、タクシードライバーにもクレームはつきものです。恐らく、実際にお客さんをムカつかせる、接客のなっていないタクシードライバーも全くいないわけではないのでしょう。
タクシードライバーは安全に、迅速に、快適にお客さんを目的地まで運ぶのが仕事であり「快適に」は大切です。
タクシードライバーもベテランになってくると、お客さんを「快適に」運ぶスキルが向上し、クレームも減ってきますが、特に新人のころは失敗、ミスが多く、いろいろなクレームを受けてしまうようです。
しかし、このクレームを減らしていくことこそ、しっかり稼げるタクシードライバーとなる「道」なのです。
1. 印象に気をつける
タクシードライバーは接客業でもあるので、第1印象が大切です。ドアを開けてお客さんを乗せた瞬間、お客さんに悪い印象を与えると、その後も些細なことでお客さんの中にドライバーに対するマイナスポイントが加算されていきます。やがてそれがクレームともなり得ます。
お客さんに良い印象を与えるには、身だしなみと車内を清潔にし、変な臭いもさせないようにします。そしてドアを開けてお客さんを迎えるときも、にこやかな表情で明るくあいさつをしましょう。
2. コミュニケーションを密に
タクシードライバーへのクレームの原因でよくあるのが、道を間違えたという失敗です。
やはり新人は道にもあまり詳しくないので、緊張もあってつい間違えてしまうようです。
例えば、本来は右に曲がる道をそのまま直進してしまい、自分でも「間違えた」と気づき、ただそれでもその失敗をお客さんに悟られずに何とか挽回しようと焦り、同じところをグルグル回って、結局お客さんに怒られると言います。
これはお客さんとのコミュニケーションが足りないことで生じるクレームです。あらかじめ、お客さんに道順を確認し、曲がるタイミングでも「ここで右折してよろしいでしょうか」などと聞いてから曲がるようにすると、クレームを避けることにもつながります。
お客さんは基本的にタクシー車内で静かに過ごしたいと思っています。しかし、必要なところでは随時コミュニケーションを取りましょう。そうして、できるだけ気持ちの「行き違い」をなくすことで、クレームを回避できるのです。
3. 同僚や先輩とのコミュニケーションも
タクシードライバーの仕事には、いろいろなトラブルも起こります。経験を積んで行くと、そうしたトラブルにもどうやって対処していけばいいのか、自分で学んでいくことになります。
また、同僚や先輩の失敗談やクレーム経験もできるだけ聞いておきましょう。先輩がクレームをどうやって切り抜けたのかを聞いておくと、自分に似たようなトラブルが起こったときにどう対処すればいいかの参考にもなります。
つまり、同僚や先輩とのコミュニケーションも日ごろから密にしておくのです。
4. 冷静に
タクシーに乗り込んで来たお客さんが「とりあえず走って」と、急かすように言うことがあります。また、目的地を言って「とにかく急いでくれ」と指示することもあります。
お客さんがいくら急いで焦っていても、タクシードライバーが同じように焦っては交通事故にもつながります。お客さんの言葉通りに急いで、それで法定速度を超えた違反運転をしてもいけません。
タクシードライバーとしてはあくまでも冷静に仕事をしましょう。
「とりあえず走って」と言われたら、まずはその通りにタクシーを発進させ、その後は曲がり角ごとに「真っすぐでいいですか?」などと行き先をこまめに確認していきます。
「急げ」と言われた場合も、極力お客さんの要望に応えつつ、交通ルール、交通マナーを守って安全でていねいな運転をしなければいけません。
5. ハッキリていねいに話す
クレームを避けるのに一番大切なのは、お客さんとのコミュニケーションです。それは恐らく、あらゆる職業、仕事で言えることでしょう。
タクシー車内でのコミュニケーションで重要なのは、お客さんの意志の確認です。お客さんが望む場所に向かっているのか、そしてお客さんが快適に過ごしているのかをタクシードライバーが把握しなければいけません。
タクシードライバーがお客さんの意志をはっきりとつかみ取れていない場合は、それを伝えてもらう必要があります。もちろん、お客さんが最初に伝えた目的地がハッキリと分からない場合は、それもしっかりお客さんに聞き返さなければいけません。分からないままでタクシーを走らせていると、それがクレームの原因になります。
お客さんに尋ねたり、話しかけるときは、ハッキリていねいに話しましょう。それが「コミュニケーションを密にする」ことです。
特に新人のときは仕事にまだ慣れていなくて、小さい声で話しかけるなど、いかにも「自信がない」という態度になってしまうかもしれません。しかし、お客さんにとっては新人かどうかは関係ないことです。研修を終えてタクシードライバーとしてデビューしたからには、しっかり「ハッキリていねい話す」ことを心掛けなければいけません。新人だから分からないことがあっても「すみません、新人でまだ分からないので、お教えください」と、ていねいに話せば、お客さんも分かってくれます。
6. 快適な車内空間づくり
タクシーに乗るお客さんは、目的地まで快適に過ごしたいと考えています。
タクシー車内が汚れていたり、変な臭いがしたり、寒すぎたり暑すぎては快適とは言えません。それはクレームの原因にもなります。
車内を清潔に保つのはもちろんですが、エアコンを使うときはお客さんに「エアコンが効き過ぎていませんか」と聞き、適宜調整していきましょう。
7. 素直に謝罪
誰もクレームは受けたくありませんが、誰もが失敗やミスは起こします。そんなときは、まずは素直に謝りましょう。「でも」とか「だって」とか、下手に言い訳や弁解をすると、かえって相手の怒りに火をつけ、クレームが大きくなることもあります。
クレームの中には理不尽な「難くせ」「言いがかり」と言えるようなものもあります。それでも、まずは謝るのが得策です。
もちろん、蹴る殴ると、相手が暴力に訴えてきた場合は警察に通報しましょう。それとこれとは話が別です。
8. 1人で抱え込まない
クレーム対応は、入社するときの研修などである程度のことは教わります。タクシードライバーは、基本的に1人で仕事をしますが、個人タクシーのドライバーでもなければ、会社の社員には変わりありません。決して「1人」ではないのです。
クレームを受けたら、どう対処すればいいか、先輩や同僚に相談してみましょう。
また、会社には「運行管理」という担当者がいます。会社が責任を問われるようなクレームに関しては、運行管理にそのクレームをゆだねることができます。
9. スキルと情報を大切に
タクシードライバーが受けやすいクレームは「道を間違えた」とか「遠回りしたんじゃないか」といった「タクシーに乗ることでの便利さ、つまり迅速に目的まで着けるメリット」を損なうことで起きがちです。
このクレームを無くすためには、道を覚え、また渋滞などの情報を早くつかむことです。
「運転が乱暴」ということもクレームになりますから、タクシードライバーとして知識を蓄え、技術を向上させることも大切です。もちろん接客術の向上も必要です。
そうやって経験を積み重ねていくと、さまざまなトラブルを回避する術も身に着けていくはずです。
10. ピンチをチャンスに
「ピンチをチャンスに」はいろいろな仕事で言われる言葉です。危機に陥ったときに、そこに業績を伸ばすきっかけになることが見つかるかもしれないので、そこでお手上げ状態にならないで、工夫と努力を怠らず、前向きに事業を進めようということでしょうね。
タクシードライバーも同じで、ミスや失敗からはなるべく多くを学び、自分の仕事に生かすことが大事です。クレームの中にも、自分を成長させてくれるきっかけがあるかもしれません。