トラックドライバーのイメージはと言うと、「礼儀正しい」「意外と優しい」「繊細」「思いやりがある」「たくましい」「カッコ良い」といったプラスのものから「運転が荒い」「怖い」「短気そう」「ガラが悪い」といったマイナスなものまでさまざまあるようです。
しかし、職業をあるイメージでくくってしまうのは不毛なことです。トラックドライバーにもいろいろな人がいるはずですから、礼儀正しい人も優しい人もたくましい人もいるでしょうし、カッコ悪い人、運転が荒い人、短気な人もいるでしょう。
どんな職業だってそうです。教師、医師、警察官、美容師、中小企業診断士、殺陣師、大道芸人にもいろいろな人がいるでしょう。
その職業に就くすべての人が、1つのイメージにくくれてしまったら大変なことになるかもしれません。
1. もし無責任だったら
トラックドライバーが皆無責任なら、ネットショップで注文した商品も、届いたり届かなかったり、また届いたとしても1年くらいかかったり、大混乱です。きっとネットショップはどこもまともに営業を続けることができなくなります。
ネットショップだけではありません。スーパーマーケットやコンビニにも商品が並んだり並ばなかったり。それに工場では部品が届いたり届かなかったりで生産スケジュールがグダグダです。
きっと、日本社会はメチャラクチャラです。
それだけ、実際のトラックドライバーは責任感を持ち、日々の業務に励んでいるということです。トラックドライバーの責任感に感謝しましょう!
2. もしのんきだったら
トラックドライバーが皆のんきなら、ネットショップで注文した商品も、待たされた挙句にようやく届く、というような事態に陥ります。スーパーマーケットやコンビニでも商品がなかなか並ばないかもしれません。ビジネスマンはコンビニで昼食を気軽には買えなくなるわけです。昼食にありつけなかったビジネスマンの仕事の意欲は激減します。それに工場では部品がこれまたなかなか届かず、生産スケジュールがグダグダです。日本の経済は衰退するしかありません。
きっと、日本社会は大混乱です。
そんなトラックドライバーは全員クビにしろ? トラックドライバーは人手不足ですから、全員クビにしたらいよいよ社会活動はすべてストップです。
しかし、実際は毎日、荷はきちんと遅れずに届きます。のんきなトラックドライバーもいるかもしれませんが、仕事に支障をきたすことはないわけです。
これがもし、トラックドライバー全員がのんきであれば、全体ののんき性が強まり、日本社会の混乱を巻き起こさないとも限らないと考えると、恐ろしいですね。
3. もしひ弱だったら
トラックドライバーはタフでマッチョで、頼りがいがあるように思われがちです。
しかし、もしトラックドライバーがひ弱だったら、体力的にきついトラックドライバーの仕事をやり遂げるのは無理かもしれません。
もしかしたら、何とか長時間、トラックを運転し続けることはできるかもしれませんが、荷の積み下ろしはできないでしょう。1つの荷を1回積んだり下ろすことはできても、それを一度に何度も繰り返したり、一度に複数の荷を積んだり下ろしたりは無理です。
もともと荷の積み下ろしはトラックドライバーの仕事ではなく、サービスとして始めたのが慣習化したそうですから、トラックドライバーの業務には荷の積み下ろしは一切行わないことを明確にする必要があります。やろうと思ってもできないのですから仕方ありません。
宅配便の配達もそうです。家、もしくは事務所などの近くに宅配便トラックが来たら、そこの住人なり従業員に出てきてもらいます。トラックドライバーが荷台の扉を開けますから、住人か従業員は自分宛ての荷を自分で見つけて受け取るわけです。
それに、長時間の運転は不可能ではありませんが、それが元で病気になったら元も子もないですから、やはりトラックドライバーは1台に2人で乗り、交代制にするしかないでしょう。
4. もし方向オンチだったら
トラックドライバーは道に迷うことなく、決められた時間までに荷を届けるのが仕事です。そんなトラックドライバーが方向オンチだとしたら、道に迷いまくってなかなか荷が届かないということになります。
こうなると、荷を届ける時間を決めること自体が無意味になってしまいます。
そんなわけで、荷の運送を頼んだ人は、忍耐強く荷の到着を待つしかありません。大丈夫です。トラックドライバーは方向オンチであっても強い責任感を持っていますから、どんなに道に迷おうとも必ず荷を届けます。
トラックドライバーが方向オンチなら、自動運転システムを早く実用化し、黙っていてもトラックが目的地に届くようにするしかないでしょう。そうしなければ、日本人は皆、どんどん忍耐強くなっていきます。
5. もしレーサーみたいだったら
トラックドライバーには本来、レーサーのような運転技術は必要ありません。トラックドライバーは必要以上にトラックのスピードを上げることはなく、荷を安全に運べば良いのですから。
そんなトラックドライバーがレーサー並みの運転技術を持っていたら、ついつい猛スピードでトラックを運転してしまうかもしれません。
しかし、そんな運転をしたら、荷は無事ではないでしょう。荷を受け取る人たちは、荷がダメージを受けている可能性を受け入れなくてはなりません。その代わり、遅配はありません。
ただ、トラックドライバーが街中でレーサーのようにトラックを運転したら、スピード違反や危険運転などで逮捕されてしまいそうです。
6. もしおしゃべりだったら
トラックドライバーは基本的に1人で仕事をします。トラックドライバーの仕事の大半はトラックの運転ですが、トラックを運転している間中、トラックドライバーは1人きりです。話し相手はいません。
そんなトラックドライバーがおしゃべりだったとしたら、しゃべりたいのにしゃべる相手がいないことでストレスがたまるでしょう。
しかし、ストレスがたまるとなおさらしゃべりたくなり、やはりおしゃべりしてしまうかもしれません。話し相手は目の前にいませんから、スマホを活用するでしょう。
運転中のスマホ操作は道路交通法違反になるので、絶対にやってはいけませんが、スマホのハンズフリー機能を使えばおしゃべりできます。
とは言え、ハンズフリー機能を使うための操作を運転しながら行えば違反行為になりますし、ハンズフリーのためのイヤホンやヘッドフォンを装着しての運転を条例で禁止している市町村もあります。
やはり、運転中にはおしゃべりできないと思ったほうが良いでしょう。
こうなりゃ、愛車であるトラックを心の中で擬人化し、仕事の相棒と見立て、トラック相手にひとり言を言うしかありません。
それでも、思わず熱中して運転がおろそかにならないよう気をつける必要があります。
7. もし最強だったら
トラックドライバーが勤める運送会社は、中小・零細企業が中心です。中小・零細企業なので下請け仕事も多いようですが、トラックドライバーがもし、この世の中で一番強かったら、下請けだからと言って腰を低くばかりはしていられません。それまで無理を言われて引っ込めていた道理を通し、かかる経費は1円もサービスせず、余裕を持って仕事をします。
世間では、トラックドライバーと言えば「余裕」と答えるようになるでしょう。
最強で余裕もあるのですから、何なら警察の危険な逮捕をサポートしても良いかもしれません。もし、自衛隊が海外派遣されるなら、その護衛をしても良いかもしれません。
凶器を持った誰かがどこかに立てこもったら、警察に代わってトラックドライバーがそいつを捕まえても良いでしょう。
トラックドライバーには誰も逆らえないのです。
8. もし高収入だったら
トラックドライバーの給料は歩合制になっていることが多く、やればやっただけ収入が上がる一方、あまり仕事できなかったら収入は上がりません。
しかしもし、トラックドライバーの給料が毎月同額で、それも政治家並みの額だったらどうでしょう。仕事をたくさんしようが、しなかろうが、とにかく高収入なのです。
きっと誰もがトラックドライバーになりたがるでしょう。中型運転免許や大型運転免許を取ろうとして大勢が自動車教習所に殺到し、教習所は大いに儲かります。若い人は運転免許の取得に興味がない? どこの国の話?になるでしょう。
トラックドライバー不足問題は一瞬にして解決です。
9. もし眉目秀麗だったら
トラックドライバーは今や40代~50代の男性が多いそうです。60代以上も珍しくありません。
つまり、おじさんが圧倒的に多いわけです。
そんなトラックドライバーが、おじさんはおじさんでも、眉目秀麗なおじさんばかりだったら、きっとモテまくるでしょう。
もしかしたら、そんなおじさんに会いたくて、運送会社に女性が押し掛けるかもしれません。同僚になりたくて女性トラックドライバーが激増する可能性もおろそかにはできますまい。
トラックドライバー不足問題は一瞬にして解決です。
10. もし世襲制だったら
多くの業界同様、トラックドライバーの業界も人手不足が続いています。
そんなトラックドライバーが世襲制になったら、とりあえず若いなり手を確保することはできます。
ただ、人手不足問題は解決するとは限りません。子どもがいないトラックドライバーだっていますから。
それに、いくら親がトラックドライバーでもどうしてもトラックドライバーになるのはイヤで、家出してしまう子が出てくるかもしれません。
そんな子を強制的に連れ帰り、イヤでもトラックドライバーにさせて物流を是が非でも守るようになったら、恐怖政治の始まりです。くわばら、くわばら。
最後に
トラックドライバーにもいろいろな人がいるでしょう。それを1つのイメージでくくってしまうのは、やはりナンセンスなのかもしれません。
「世襲制? 何をバカな」と思う人も多いかもしれませんが、中にはトラックドライバーという仕事を子どもに継がせようといろいろ試している人が絶対にいないとは言い切れません。