「トラックドライバーの仕事は誰でもできる」なんて思っていませんか? それは間違いです。
確かに、トラックドライバーになるのに医者や弁護士になるほどの学力、お金は必要ないかもしれません。類まれなる美貌も世界記録を塗り替える身体能力も、政治家のような二枚舌や厚かましさも必要ありません。
しかし、だからと言ってトラックドライバーの地位が医者や弁護士より低いわけではありません。政治家はルールを破っても平気でいられる特権階級身分のようですが。
どっちが高い、低い、良い、悪いではありません。医者や弁護士の仕事をできても、トラックドライバーの仕事はできないという人もいるでしょうし。
とは言え、これさえあればトラックドライバーになれるという具体的な項目があります。
1. 危機管理能力
トラックドライバーの仕事の大半はトラックの運転です。トラックは通常、公道を走ります。公道にはトラック以外のいろいろな車が、それぞれの事情、異なった性格、さまざまな運転技能を持ったドライバーによって走行しています。同じ車種ばかりでもありませんし、走り方もそれぞれですし、何か起こったときの反応も違ってきます。
そんな車がたくさん走る道路は、何が起こるか分からない、予測不能なデンジャラスゾーンだと言えます。1秒先に何が起こるか分かりませんし、何が起こっても不思議ではありません。
突発的に危機的な何かが起こったとき、的確に対処できる危機管理能力は、トラックドライバーにとってとても重要です。
2. 責任感
トラックドライバーに何よりも必要とされるものが責任感だと言っても良いでしょう。トラックドライバーの仕事は他人の荷を預かり、安全に運ぶことですから「他人の荷なんてどうなろうが知っちゃいない」なんて野放図な性格ではできません。
調子良く、楽して儲けることばかりを考え、ゴマすりで出世し、会社でも居眠りして過ごしてばかりのC調な人にトラックドライバーは務まりません。
3. 対人術
トラックドライバーは基本的に1人で仕事をするので、あまり人と接する時間はありません。とは言え、全く誰とも接しないわけではありません。
社外でも荷主の担当者とやり取りすることはありますし、社内で上司、同僚とも接します。
特に荷主に対しては、いくらトラックドライバーは基本的に1人で仕事をすると言っても無愛想に接してはいけません。トラックドライバーも外に出れば、1人1人が自社の看板を背負っていると考えなければいけません。
また、それは道路上でも同じです。
道路上で誰かと対面で接し、話をすることはほとんどないですが、何台もいろいろな車が走行する道路上では、車と車が接していることになります。直接ではありませんが、ドライバー同士の気持ちが接していることになります。相手が車の場合なら、無愛想にしたり、礼儀を欠いて良いというわけではないのです。
周囲の車や歩行者、近隣住民に対して礼儀を重んじる対人術、対車術が必要なのです。
4. 強靭な肉体
トラックドライバーの仕事は体力仕事と言われています。トラックの運転で多くのカロリーを消費するわけではありませんが、仕事としてはとても疲れます。ですから、なるべく疲れないような強靭な肉体が必要なのです。
トラックドライバーが体調を崩すと、交通事故を起こす危険が高くなります。ですから、日ごろから体を鍛え、強靭な肉体をつくっておくと良いでしょう。
5. 広い視野
トラックドライバーは常に交通事故のリスクにさらされていますし、道路とはまるで生き物のように刻々と表情を変えていきます。つまり、道路状況は一定ではなく、絶えず変化しています。
そのため、トラックドライバーは広い視野を持って周囲の状況を把握して分析しなければいけません。どのような状況でも、1つの考え方に固執したりせず、ときには受け入れがたい周囲の車の運転態度も受け入れ、ネガティブな感情に惑わされて判断を誤ったりすることがないようにするのです。
6. 空間認識能力
空間認識能力とは、空間にある物の位置・形・大きさ・速さ・向きなどを、素早く正確に把握、認識する能力のことです。
この能力によって交通事故リスクを回避したり、効率的な運転が可能になります。トラックドライバーに限らず、あらゆるドライバーにとって身に付け、なおかつ高めてほしい能力です。
7. スケジュール管理能力
多くのトラックドライバーにとってスケジュール管理はとても重要です。
ルート配送の仕事の場合、決められたルートを決められた時間に回る仕事なので、スケジュール管理をおろそかにして遅刻してしまうと大変です。
長距離配送の仕事でも、何時にどの地点を通過するか、きちんとスケジュール管理して効率的に仕事を進める必要があります。
8. 持久力
トラックドライバーの仕事の大半はトラックの運転です。仕事の大半なので、相当長い時間、トラックを運転します。
トラックの運転は両手足を使った複雑な作業ですが、実はシンプルな作業とも言えます。例えば5時間、トラックを運転するとしたら、5時間、大体同じ動作を繰り返すことになります。最初の2時間はハンドル操作だけ、次の2時間はアクセルを踏むだけ、残りの1時間はギヤチェンジだけ、というわけではありません。
長時間、同じ作業を続けても飽きたり、嫌になったりせず、安全運転を念頭にずっと同じ気持ちで運転を続ける必要があります。
これをやり遂げるには、やはり持久力が必要です。
9. 冷静さ
くどいようですが、道路上にはいろいろ危険が潜んでいます。その危険を察知したとき、常に冷静に対処する必要があります。
例えば、気に入らない運転をするドライバーがいてもイラっとして感情の任せるままにあおり運転や危険運転をし、警察に捕まったりして「向こうが先にあおってきた」なんて言い訳をするなんてもってのほかです。
常に冷静さを保ち、「かまへん、かまへん」という余裕を持ちましょう。
10. 判断力
くどうようですが、道路上の状況は刻々と変化していきます。変化するたびにどう動くか的確に判断しないと、交通事故リスクが上がったりします。
また、スケジュール管理においても判断力は重要です。何しろ、道路上の状況は常に変化していくので、計画通りにいかないことも多いわけです。臨機応変に対応できる判断力は必要不可欠だと言えます。
11. 観察眼
トラックドライバーに視力は重要です。道路上の変化を見落としてはいけないからです。
もちろん、ただ見ていれば良いわけではありません。前方の車が急ブレーキをかけたり、想定外の行動に出たりするのを見逃していけません。前方の車が急ブレーキをかけたなら、さらにその車の前方で何かが起こっているのかもしれません。
とにかく周囲をよく観察し、周囲で何が起こっても見逃さず、きちんと対応すると、事故なども防ぐことができるのです。
12. 包容力
トラックドライバーの仕事にも、過酷と思えることがあります。トラックドライバーも人間なので、ときには何か無性にイライラしてしまう日もあるでしょう。
しかし、そんなときでもていねいでおだやかな運転をしなければいけません。交通ルールと交通マナーを守り、譲り合いの気持ちでハンドルを握らなければいけません。
冷静であることはもちろん、誰でも温かく包み込む包容力が必要なのです。
13. 信念
トラックドライバーが何よりも優先しなければいけないのは安全です。
もちろん、仕事としては荷主との契約を守ること、例えば荷を指定された時間に届けることが大事ですが、いざとなったら優先しなければいけないのは安全です。
それは決して譲ってはならない信念として持たなければいけないものなのです。
14. 人情
人情とは、他者への思いやり、いつくしみに根差した人間の感情のことです。
以前、豪雪地帯で車が立ち往生してしまったとき、トラックドライバーが積み荷の食べ物を配ってくれたことがニュースになっていました。
そういった非常時以外にも道路では、道路特有のアクシデント、トラブルが起こることがあります。トラックドライバーはいろいろな地域に行きますから、行く先々でそうしたアクシデントやトラブルに出くわし、困っている人を助けたりしています。
それは社会人としての義務、職業ドライバーとしてのプロ意識からの行為かもしれませんが、根底にはやはり思いやり、いつくしみの気持ちがあるのではないでしょうか。
15. 英知
トラックドライバーは体力仕事なので、あまり知性を使わないと誤解している人もいるかもしれませんが、安全運転やスケジュール管理、刻々と変わる道路状況に応じて仕事を進める臨機応変な判断力など、英知が備わっていないとできない仕事です。
16. やる気
トラックドライバーの仕事にも、他のいろいろな仕事同様、仕事を続けていると「ツラいな」「苦しいな」と思うことがあります。
そんなとき「あきらめない」「負けない」と強く思えると、ツラさや苦しさを乗り越えてトラックドライバーとして、人間として成長できます。
「あきらめない」「負けない」と強く思う気持ちとは、つまり「やる気」です。
この「やる気」が出ないということは、トラックドライバーには向いていないのかもしれません。
17. 強運
人には、自分の努力や能力だけではどうにもできないことがあります。すなわち「運」です。
生まれつきコレステロールや血圧が高い人もいます。いわゆる体質がそういう体質なわけですが、それも自分の努力や能力だけではなかなかどうにもしにくいものです。
交通事故も、いくら安全運転に努めていても、運悪く巻き込まれてしまうということもあります。
もちろん、気の持ちようで幸運を呼び寄せたり、逆に不運を呼び寄せることもあると言いますが、なかなか難しいです。
努力や能力だけではどうにもできないことだけに、強運の持ち主はトラックドライバーとしても成功するに違いありません。
最後に
以上の項目は、トラックドライバー以外の仕事をする上でもかなり有利に働くものかもしれません。どんな仕事に就くにせよ、以上の項目のものをできるだけ手に入れて臨みましょう。すべてそろったら、医者や弁護士になれるかもしれません。