子どもは学校で優秀な成績を取ろうとします。本能的な競争心がそうさせるということもありますが、親がやたらと「勉強しなさい」と言うからです。そして親がやたらと「勉強しなさい」と言うのは、「優秀な成績」が進学への道につながるからです。それも高学歴進学への道です。
親が子どもに高学歴進学を求めるのは、「見栄」のためもあるかもしれませんが、有名大学に進学し、そのまま有名企業に就職してほしいと願うからです。
多くの人が「人類の幸福は有名企業就職にアリ」と考えているのかもしれません。
そんなわけで、多くの人があまり深く考えることもなく、大学を目指します。ただ、多くの大学は、単にテストで高得点を上げれば入学する資格を得られるので、楽に高得点を上げるコツをつかんだ人以外は、青春時代の貴重な時間の多くを、ただただテストで高得点を上げるために費やします。
そのため、テストで高得点を上げることに、過大な価値があると思い込みます。貴重な時間を費やすのですから、そこに大きな価値があると思いたがるのも仕方ないことかもしれません。
そうやって有名企業に就職したからと言って、人は幸せになれるとは限りません。
そんなことに気付いてしまった人は、ある日突然、トラックドライバーになったりします。トラックドライバーは昔から「学歴不問」の求人が多く、トラックドライバーになると、それまでの学歴偏重とは違う世界が開け、新鮮で魅力に感じるのかもしれません。
1. 人間関係にわずらわされたくなくなった
多くの会社は、事務所に従業員が集まって仕事をします。そこには上司、同僚、先輩、後輩などがいます。
また、ビジネスの多くはチームとして進めることになります。上司には根回しも必要ですし、先輩のことは立てなければいけませんし、手柄を横取りされないように同僚にも常に注意しなければいけませんし、後輩からパワハラなどで告発されないように気も使わなければいけません。
人間関係がわずらわしいです。
仕事そのものの難しさより、この人間関係のわずらわしさで神経をすり減らします。
この人間関係のわずらわしさから逃れようと、トラックドライバーに転職します。
トラックドライバーは基本的に1人で仕事をするので、人間関係のわずらわしさがとても少ないと言われているからです。
2. 転勤がイヤだった
わざわざ有名大学に入学して就職するような有名企業は、大抵大企業なので全国に支社があります。当然、転勤もあります。
入社を決めるときも、もちろん転勤の有無は確認しますが、他の就職希望先の企業がことごとく不採用で、転勤アリの会社にしか入社できなかったり、入社時には確かに「支社はそれぞれ現地採用で、基本的に転勤はない」と聞いていたのに、入社3年後くらいで転勤の辞令が出て、不服を言ったら「“基本的には”と断っただろ」と突っ返されたり、結局転勤することになります。
しかし、やはり転勤はイヤなので、トラックドライバーに転職するわけです。
もちろん、トラックドライバーが働く会社にも転勤が存在するところはありますが、支社のない中小・零細会社が多いので、「転勤のない会社」を見つけるのはとても簡単です。
3. 異動がイヤだった
わざわざ有名大学に入学して就職するような有名企業は、大抵大企業なので、大抵いろいろな部署があります。メーカーでも第1生産部、第2生産部、第3生産部などがあり、それぞれ作業内容が違っていたりします。
入社して研修を経て配属された部署が、相性の良い上司や先輩ばかりで、とても居心地良く感じていたのに、突然異動を命じられ、渋々異動してみると、仕事内容もつまらなく、上司や先輩とも合わないと、心底イヤになります。
もしくは、上司が異動になり、新しく着任した上司がパワハラ、セクハラ当たり前のアナログ親父だったりしても、イヤになります。
それでトラックドライバーに転職します。トラックドライバーが働く会社にトラックドライバーとして入社すると、基本的にずっとトラックドライバーですから。
4. 通勤がイヤになった
多くの会社は、事務所に従業員が集まって仕事をします。そのため、自宅から会社まで通勤することになります。
通勤は、自宅近くの小学校に通う通学と違い、まず住宅街からオフィス街に行かなければいけないので鉄道かバスを使うことになります。鉄道やバスには、いろいろな会社に通勤する人、さらにはいろいろな学校に通学する人、それにその他の用事で移動する人たちが乗るので、満員になります。なかなかしんどいです。
ある日、このしんどさに気付くと、人はトラックドライバーに転職するわけです。
トラックドライバーは仕事によって出勤時間も違ってくるので、通勤ラッシュに該当しない時間帯を選ぶこともできます。
また、トラックドライバーが働く運送会社は、あまり一般的なビジネスマンが働く会社の集まるオフィス街にはないので、通勤ラッシュでもそれほどしんどく感じないで済むかもしれません。会社によっては、自家用車での通勤もできます。
5. 親の希望を一度は聞いて肩の荷を下ろした
青春時代の貴重な時間を費やし、一流大学に入って一流企業に就職しました。しかし、それは自分の意志だったというより、親の願った進路だったから、という人もいるのではないでしょうか。
一流企業に入ったものの、毎日好きでもない仕事を続けるのは嫌なものです。ふと「何のためにこんな嫌な思いを続けなければいけないのか?」と考えると「親のため」という以外の答えはありません。このままではいつか、親を恨みそうです。いえ、その前に身体を壊してしまうでしょう。
そんな思いに気付くと、人はトラックドライバーに転職するわけです。
そして「自分の好きなことができる」と思える、充実した毎日を送るようになります。親は怒り、泣き、戸惑いましたが、その内、分かってくれるでしょう。人生は親のためにあるわけではなく、自分のためにあるものです。
それに、一度は親の希望を聞いて一流企業に入ったのですから、親孝行も十分したと言えます。
6. 就職先が倒産した
青春時代の貴重な時間を費やし、一流大学に入って一流企業に就職しました。しかし、入社してほどなく、会社が倒産してしまいました。
おーまいがー! 倒産しないはずだから一流企業に入ったのに!
やはり現代社会では、経済の先行きは不透明で、全く先が読めません。いつ、何が起こっても全く不思議はないようです。
そんなわけで思いがけず失業してしまうと、人はトラックドライバーに転職します。トラックドライバーを採用したい会社は多く、いつでも多くの求人が出ていますから。
そしてトラックドライバーが働く物流・運送業界は、この先ずっとなくなることのない業界なので、たとえ運悪く就職先が倒産しても、すぐに新しい就職先が見つかり、職を失うことはなさそうなのです。
7. 大きなミスをした
人は必ずミスを犯します。ミスを犯すと、人は落ち込みます。
「それはそれ」と考え、素早く切り替えることができる人は幸いですが、中には引きずる人もいます。仕事がイヤになっちゃう人もいます。
好きな仕事であれば、そこで歯を食いしばって続け、輝く明日を手に入れることもできたかもしれませんが、「好きとか嫌いではなく、皆がそうするので何となく」勉強して一流大学に入り、同じように一流企業に入っただけなので、仕事や会社への思い入れは全くありません。すなわち皆無です。
そんな風に、会社に行くのをイヤになっちゃうと、人はトラックドライバーに転職します。そういや車の運転を好きだったことを思い出すからです。
トラックドライバーになってもいろいろな苦難にブチ当たりますが、「好きな仕事」なので苦難を乗り越え、輝く明日を手に入れ、また苦難にブチ当たり、また乗り越えます。そんなこんなを繰り返して充実しまくった日々を送るのでした。
8. 「やり切った」と感じたから
一流企業に入る人が皆、親の希望をかなえるためだったり、世間の流れに従って何となくだったりするわけではありません。中には「この仕事がしたい!」というたぎる情熱を持て余し気味に入社する人もいます。
入社してからも、残業代ゼロやら休日出勤やら自宅に仕事を持ち帰ることやら、お構いなしに仕事しまくります。他人からワーカホリックなどと突っ込まれても全く意に介しません。
そして自ら進んで巨大プロジェクトの担当になり、まさに寝食を忘れて没頭し、そのプロジェクトを成功させて会社に大きな収益をもたらします。
会社としては、ぜひ引き続いて巨大プロジェクトを引っ張って活躍してほしいわけですが、本人は「燃え尽きたぜ、真っ白にな」という心境。
そんな風に、やりたかった仕事を「やり切った」と感じると、人はトラックドライバーに転職します。全く違う業界で、全く違うスキルを要求される仕事をしたくなるわけです。案外、よくあることかもしれません。
9. 自由になりたかった
偏見ですが、一流大学から入れる一流企業の多くは、チームワークで仕事をします。当然、わずらわしい人間関係が生じます。退社して自宅に戻っても、休日、遊びに出掛けても、そんなことにはお構いなしに仕事の電話がかかってきます。携帯電話を発明した人を絞め殺したくなったりします。
一流企業なので生活は安定しますが、毎日ががんじがらめに縛られている窮屈さを感じざるを得ません。
忙しい毎日を過ごす中、エレベーターで1人になると「ああ、自由になりたい」と、思わず声に出してつぶやきます。
そんな人はトラックドライバーに転職します。トラックドライバーは基本的に1人で仕事をするので、多くのことが自分の裁量に任されています。トラックの運転席は普通自動車より高い位置にあり、周囲から中までは見えにくいので、他人の視線を気にする必要が少なく、また、運転中は好きな音楽も聞きたい放題です。
そのため、自由になりたい多くの人がトラックドライバーになったりします。
10. 人生が短いことを悟った
天界で大暴れして釈迦如来に捕まった孫悟空は、五行山で500年間拘束されることになります。500年間です。何と長いことでしょう。人間であれば、数世代分にもなります。
そう考えると、人間の一生とはとても短いと分かります。
ちなみに孫悟空はその後、玄奘三蔵の弟子となってインドに取経の旅に出ますが、中国からインドに行って戻るまで14年かかっています。玄奘三蔵を待っていた唐の皇帝は「長かった」と言いますが、孫悟空にしてみればあっと言う間だったに違いありません。
それはともかく、人生の短さを悟ると、人は「生きているうちに自分の本当にしたいことをしないともったいない」と思い、「本当にしたいこと」を探し、やがてそれが「トラックドライバー」だったことに気付きます。
農業だった人は農業を始め、美容師だった人は美容師になり、料理人だった人は料理人になります。
最後に
中には、何の理由もなく、ある日突然トラックドライバーに転職する人もいるかもしれません。