少子高齢化に歯止めがかからないこともあり、多くの業界が人手不足となっています。働く人たちがどんどん歳を取り、次の時代を引き継ぐ若手が入ってこないわけです。
トラックドライバーも同様に高齢化が進み、若手が激減しているそうです。
このまま行けば、「トラックドライバーがいなくなるんじゃね」と思えてしまいますが、今日も道路にはたくさんのトラックが走っています。もちろん、自動運転の無人トラックではありません。
トラックドライバーが激減しているなら、走るトラックも激減し、道路はどこでもガラガラなはずです。しかし、くどいようですが、たくさん走ってします。
なぜでしょう?
1. 社会が必要としているから
トラックドライバーがいなくなることがないのは、そりゃもちろん必要だからです。
電力のようなものです。
何しろトラックドライバーは人々の生活や企業の事業展開に必要なものを運びます。トラックドライバーがいなければ人々の生活も企業の事業展開も止まってしまうわけです。だったら、もっとトラックドライバーの給料を上げろよと、多くの人が思うはずです。
2. なりたい人がいるから
トラックドライバーになりたいという若い人が激減し、トラックドライバーは高齢化が進んでいますが、なりたい人がゼロになったわけではありません。
トラックドライバーの仕事の大半はトラックを運転することで、車の運転が好きな人にとってはとてもうれしい仕事です。その上、年収は約300万円~700万円と言われ、決して少なくはありません。また、仕事中はほとんど1人で過ごすので人間関係によるストレスが少なくて済みます。
そういったトラックドライバーの仕事上のメリットを魅力と感じる人たちもいるのです。
3. 自動運転の実用が難しいから
トラックドライバーの人手不足が進んでいるのも事実です。
そこで、トラックドライバーが少なくなっても物流が大きく影響を受けないように、すなわちトラックドライバーがいなくなっても困らないように、いろいろな対策が考えられています。
自動運転システムの開発もその1つです。トラックにドライバーが乗っていなくても勝手に目的地まで行ってくれれば、トラックドライバーがいなくても大丈夫なわけです。
このシステムの開発はかなりの段階まで進んでいるようです。そのため、早とちり気味な人は「トラックドライバーは近い将来、皆失職する」なんて言い出す始末。
システムとして確かに良いところまでできているようですが、ただ、トラック以外もいろいろな車がそれぞれの事情を抱えて走り、すぐ横の歩道にはこれまたいろいろな事情でそこを歩く歩行者がいる道路を、無人トラックが走るのはかなり難しいでしょう。
高速道路の限定した区間のみを走るなどの利用は近い将来、実現するかもしれませんが、いずれにしろ、トラックを運転できる誰かがトラックに乗っていなければいけません。
予想できる未来は、トラックドライバーの仕事が楽になる、ということではないでしょうか。
4. どこでもドアがないから
完全にトラックドライバーが不要になる物流も、遠い未来には実現する可能性はあります。
ある地点から別の地点まで、瞬間移動できる装置があればいいわけです。ただ、その装置がある場所まで荷を運ぶには、やはりトラックが必要になります。ですが、もし、どこへでも簡単に持ち歩けるような装置なら、もうトラックの出番はありません。
工場で完成した製品を倉庫まで瞬間移動させ、倉庫から店や個人宅まで瞬間移動させるわけです。
そんな装置ができない限り、トラックドライバーは社会から必要とされる存在であり続けるのかもしれません。
5. 人手不足の解消に取り組んでいるから
トラックドライバーの人手不足は、昨年から急に言われるようになったわけではありません。もっと前から問題となっています。
この問題の解決に、それぞれの会社はもちろんのこと、業界全体、そして行政も取り組んでいます。
例えば、行政の旗振りで始まったホワイト物流推進運動もその1つです。
トラックドライバーに若いなり手が少ないのは、昔ながらの労働環境が若い人に不評なのではないかということで、その労働環境の改善を進めようという取り組みです。
また、従来は圧倒的に男性が多かった職場なので、女性を積極的に採用していこうという動きもあります。
こうした取り組みによって、トラックドライバーのなり手が急増したわけではありませんが、それでも「トラックドライバーがいなくなる」ことを遅らせる効果は上げているのかもしれません。
6. 仕事が何種類もあるから
ひと口にトラックドライバーと言っても、いろいろな種類の仕事があります。
中には長時間勤務で過酷という仕事もあれば、短時間勤務ですぐ終わる仕事もあります。
また、トラックドライバーが働く会社にもいろいろあります。
福利厚生が充実している大企業があれば、福利厚生はそれほど充実していないかもしれないけど居心地の良い、こぢんまりした会社もあります。
中には、若いなり手が集まるような、魅力的な職場もあるわけです。
7. 辞めたくない人もいるから
多くの業界で少子高齢化が進み、新しく入社する若手が減る一方で、労働力確保のために定年延長などを取り入れ、従業員が高齢化しています。
そんなわけで、確かに20代の若手トラックドライバーは少ないのですが、40代、50代の働き盛りのトラックドライバーは大勢います。
トラックドライバーの仕事を誇りに思う人、トラックドライバーの仕事を楽しいと思う人もいて、トラックドライバーの仕事を長年続けているわけです。
8. トラックがあるから
トラックは魅力的な乗り物です。そのトラックに魅せられた人もいますし、自動車の運転を好きだという人もいます。
トラックに魅せられた人がいる限り、トラックは作られ、トラックが作られる限り、トラックを運転する人もいるのです。
職業としてのトラックドライバーがなくなったとしても、トラックを運転するトラックドライバーがいなくなることはありません。
ただ、職業としてのトラックドライバーがなくなれば、物流はストップし、人々の生活も企業の事業も大打撃を受けます。
9. 最後に
コンパクトな瞬間移動装置でも発明されない限り、トラックドライバーは社会から必要とされると同時に、いろいろなメリットや魅力もある仕事です。もちろん、デメリットもありますし、トラックドライバーの仕事に合わない人もいるでしょう。
それでも、絶対になくしてはいけない仕事なのです。