トラックは車体が大きいだけに事故を起こすと被害が大きくなりがちで、しかも人々の生活や企業の経済活動を回すために日夜走り続けているので、トラックはしょっちゅう、たくさん走っていることになり、それだけに交通事故の可能性も高くなりがちです。
そんなわけで国土交通省は事業者にきちんとトラックドライバーに対して安全教育をしてもらおうと「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」を策定したのでございます。
1. 心構え
まずはやはり気持ちです。気持ちが大事です。
とは言え、単に心の中で「安全、安全、安全」と唱えていれば良いということではなく、トラック輸送の社会的重要性を自覚し、事故の社会的影響を理解し、統計による分析結果を共有した上で、相手の立場になっての運転を心掛け、プロとして周囲の模範となるような、安全でマナーの良い運転をしなければならないそうです。良いこと言いますな。
2. 基本
トラック輸送、車の運転には、守らなければいけない法令があります。そこから、トラックドライバーが必ず守るべきポイントをしっかり理解して把握しなければいけません。
法令は、守って当然と言いますか、守ることがドライバーの義務でもあります。この義務を果たさないで事故を起こすと、恐ろしいことになるという現実も理解し、しっかり義務を果たさなければいけないのです。
3. トラックの構造
トラックドライバーとして交通事故を避けるには、トラックの構造上の特性も理解する必要があります。
すなわちトラックは背が高く、胴が長く、幅が広く、とにかくデカいです。デカいので死角が大きくて多く、スピードの影響も大きくなりがちです。それだけ普通自動車とは違います。それをしっかり理解して、法定速度を守り、車間距離を十分取り、曲がるときはしっかり減速するなど、安全を考慮した運転をしなければいけません。
トレーラーはさらに運転が厄介になります。何しろトレーラーに対してトラクターが折れ曲がったりします。
また、荷を積んだときと積んでいないときも、トラック全体の重量が大幅に違ってきますから、当然運転性能に違いが出ます。積んでいる荷の性質も運転に影響を与えます。例えば、液体を積んでいる場合には横転の危険性が増します。
荷を積んで走ることに関する正しい知識も必要なのです。
4. 荷の積み方
トラックの大きな特徴と言えば、やはりたくさんの荷を積んで走るというところです。
この荷をすき間なくきちんと積み、またきちんと固定しないと、走行中に荷が片方に寄ってしまい、荷崩れを起こしたり、車体を横転させたりする危険があります。
また、荷を積むことにもルールが定められていて、長さ、幅、高さなどの制限を守って積まなければいけません。
しかし、いくら荷をきちんと積んでも運転が乱暴であれば荷崩れを起こさないとも限りません。つまり、起こします。
急なハンドル操作、急ブレーキを避け、また走行途中にも積み荷の状態を点検しましょう。高速道路では特にそうです。
5. 積み過ぎると危険
貨物自動車が積んで良い荷の重量は法律で決められています。この規定の積載重量を超えて貨物を積んで走ると、過積載(かせきさい)という法律違反行為になります。道路にダメージを与えたり、周辺に騒音、振動という迷惑、すなわち交通公害も及ぼします。
もちろん、事故を起こしやすくなります。
昔は会社が発注を断り切れなくてドライバーに過積載を強いた、なんてことも日常茶飯事だったようです。しかし、ドライバーも事業者も絶対にやってはいけません。
6. 危険物に要注意
トラックには危険物とされる荷を載せることもあります。
危険物の取り扱いには危険物取扱者という国家資格の取得が必要となります。トラックドライバーがこの資格を持つ必要はなく、資格を持っている人が同乗すれば良いのですが、それでは人件費が余計にかかるので、通常は資格を取得しているドライバーが危険物を運びます。
危険物と言っても液体やら固体やら気体やらいろいろあり、それぞれ性質なども違います。危険物を扱う場合、その性質などをきちんと理解しなければいけません。
7. 通る道の状況
交通事故は、トラックを走らせるいろいろな環境の影響でも起こり得ます。渋滞、道路工事などの道路状況、天候、事故が起こりやすいカーブなどの危険ポイントなどといった各種情報を事前に入手し、安全なルートを算出することは、事故回避では大いに有効だと言えます。
また、特殊な積載物が道路法などの規定法令の制限を超えている場合、ドライバーは「道路運送車両保安基準」「道路法」「道路交通法」に基づいた運送許可を取得しなくてはならないそうです。
8. 危険の予測
交通事故はちょっとした気のゆるみから起こってしまいます。
この危険を回避するため、危険を予測する力を身に付けておくことが肝心です。常に冷静に、周囲の状況を把握して判断し、トラックを運転しなければいけません。
道路には自動車以外にも歩行者、自転車、バイク、スクーターなどがいたりします。自転車やスクーターは安定性が低く、予想外の動きをする場合もあるのに、死角に入るとトラックドライバーが存在に気付きにくいものです。そうしたそれぞれの特性を把握し、危険を予測してトラックを運転しなければいけません。
夜間、雨などの悪天候でも交通事故のリスクは高まります。そうしたリスクを予測し、より慎重な運転をする必要があります。
気のゆるみは慣れからも起こります。点検や運転、荷の積み下ろしにおいても指差し呼称、安全呼称を習慣化して安全を守っていきましょう。
とは言え、どれだけ気をつけても起きてしまうのが交通事故です。事故発生時にはドライバーは「負傷者の救護」「道路上の危険の除去」「警察への報告」「事業者への報告」など、やるべきことがたくさんあるのも忘れてはなりません。
大雪や地震、嵐などの自然災害も、トラックドライバーが直面する可能性のある危険です。そうした緊急時の対処方法もあらかじめ知っておきましょう。
9. 運転適性
トラックドライバーだけではなく、バス運転手、タクシードライバーには「運転適性診断」の受診が義務化されています。
この「運転適性診断」によって、ドライバーが自分のクセを理解し、安全運転の邪魔になるようなクセを克服できれば、交通事故回避に大いに役立つでしょう。
10. 心理的要因
交通事故には生理的、心理的な要因も関わってきます。要因には例えば過労、睡眠不足、焦り、オレ様気分などがあります。オレ様気分とは「オレは運転がうまいから事故なんて起こさない」という思い上がりや「オレは酒が強いから少しくらい飲んでも酔ったりしない」という思い違いです。危険です。
こうした自分への過信は慎み、過労や睡眠不足をためないよう、規則正しい生活、こまめな休憩などを心掛けることが肝心なわけです。
焦りやイライラ、疲労は交通事故の大きな要因になります。気をつけましょう。
11. 健康管理
ドライバーの精神状態だけではなく、肉体的な健康も運転に影響します。健康状態が悪く、悪影響を及ぼすと、交通事故を起こしかねません。
脳疾患、心臓疾患、糖尿病などを要因とする交通事故は結構多いそうです。
トラックドライバーは栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動などで日々の健康管理を徹底し、心身ともに健康を維持しましょう。きっと交通事故が遠のきます。
12. 安全機能は適切に使うべし
自動車メーカーなどがさまざまな運転支援装置を開発しています。CMなんかを見ていると、これなら交通事故なんて怖くないなんて思えてしまいます。
しかし、実際はそうした装置の性能の理解不足や過大評価で事故が発生することもあるとかないとか。
もし、そうした装置を搭載したトラックを運転するにしても、装置の性能、使い方をしっかり理解した上でなければ、とんでもないことにならないとも限らないわけです。
最後に
以上は、トラックドライバーだけで取り組んでも最大の効果を発揮できないかもしれません。事業者とともにしっかり取り組み、交通事故を必ず回避していきましょう。