ほとんどのトラックドライバーが「事故を起こすまい」と思い、安全運転を念頭に仕事しています。「ちょっとぐらい事故しても構わない」なんて思っているトラックドライバーなんていないはずです。
しかし、悲しいことに、それでも事故は起きてしまいます。
トラックドライバーも、その他のドライバーも、トラックのメーカーも、トラック協会も、警察も、その他、関係各所が交通事故撲滅に向けて取り組んでいるのですが、交通事故はゼロになりません。世の中には「多少の誤差はしょうがないか」と思えることもあったりしますが、交通事故はゼロになってほしいものの筆頭ではないでしょうか。
1. アルコール検知装置
交通事故の原因の中で、何とも腹立たしいのが飲酒運転です。「少しぐらい飲んでも大丈夫」なんて思っている人は、即刻運転をやめるべきです。これまで事故を起こさなかったのは「大丈夫」だからではなく、単に「幸運」だったからです。
そんな飲酒運転を撲滅すべく、運転席に少しでもアルコールを検知したらエンジンがかからなくなるような装置を設置します。
装置としてはすぐにでも開発できそうですが、消毒液のアルコールも検知しそうなので、「飲酒運転撲滅」に目的を絞り込んだ装置の開発はムズイかもしれません。
2. 体調チェック装置
トラックドライバーは毎日、体調をチェックしてから勤務します。しかし、体調は時間によって変わるので、チェック後、勤務中に体調が悪くなって事故につながることもあり得ます。
そこで、運転中も絶えず運転者の体調をチェックする装置を搭載します。運転者の脈拍、体温、呼吸、視線などを検知して運転者が今、どんな体調、心理状態なのかを測定し、健康状態が悪化していたり、睡魔に襲われていたり、イライラが募っていたり、AIが「運転に支障がありそう」と判断すれば、自動運転に切り替えて安全にトラックを停車させます。
トラック停車後、トラックドライバーが適当な対処を行うわけですが、荷が届くのは遅れるかもしれません。しかし、荷主も事故防止のため、多少の遅れは我慢すべきです。
何ごとも「交通事故よりはマシ」と思いましょう。
3. 自動運転システム
体調チェック装置によってトラックドライバーの不調が測定されれば、自動運転システムに移行するわけですが、じゃあ、最初から自動運転システムを使えばいいじゃん、という話です。
もちろん、現在も自動運転システムの開発は進められていますが、トラックドライバーが同乗していなくても大丈夫なレベルの自動運転システムの実現が待たれます。
もちろん、想定外の事態に備え、トラックドライバーは同乗すべきですが。
4. 自己修復装置
交通事故の原因はトラックドライバーだけにあるのではありません。トラックの不調も事故につながることはあります。
そこで、トラック自体に、不調を発見してそのまま修復してしまう装置を搭載します。
もちろんこれまでも、トラックドライバーが運転しながらトラックの不調に気付き、一旦、トラックを停車し、不調の原因を確認して対処してきたのでしょうが、トラック自体に自分で不調箇所を見つけ、修復できる装置が備われば、トラックドライバーの「何かトラックの調子が悪いかも」という感覚に頼らなくてよくなります。
5. スリップしないタイヤ
交通事故はトラックドライバーの不注意や体調不良、トラックの不調だけで起こるものではありません。
雨や凍結などで、道路が滑りやすくなっている場合も起こります。従来、こうした「滑りやすい道路」には、スノータイヤや、ドライバーの「滑らないよう、細心の注意を払った運転」などで乗り切ってきました。
そこで、雨でも雪でも安心して走行でき、しかも普通の乾いた道路で履き替える必要のタイヤを装備します。
それなら今も「オールシーズンタイヤがあるんじゃね」と思う人もいるでしょう。オールシーズンタイヤは、タイヤのゴム自体に特殊なコンパウンド素材を使い、溝の模様も排水性を高めるようになっていて、晴れた日でも、雪が積もった日でも、雨で道路が濡れた日でも対応できるようになっています。
ただし、積雪が深く、路面条件が悪化したときに出される「全車両チェーン装着規制」下では、オールシーズンタイヤもチェーンを装着しなければ通行できません。
完全無欠なタイヤの実現まで、あと一歩です。
6. レーダー
雨や雪が降ったとき、交通事故に結びつく要因は道路状況だけではありません。荒天時には視界も悪くなります。
そこで、どんどん降り続く雪で視界を阻まれたときでも、トラック周囲の状況が分かるようにレーダーを搭載します。
レーダーで感知された周囲の状況を3Dアニメでドライバーが確認できるようにすれば、安全にトラックを走らせることができます。
レーダーで障害物などを感知すると自動的にそれを回避するような、自動運転システムとの連動もありがたいです。
7. 飛行装置
自然災害は恐ろしいものです。
山道を走っていて、突然、目の前の道路が陥没したら、さあどうしましょう。障害物ではないので、レーダーも感知しないかもしれません。急ブレーキでも、勢いあまって陥没したところに突っ込む危険は回避できないかもしれません。
そこで、トラックに飛行装置を搭載します。
急ブレーキが間に合わなくても、そのままジャンプし、空を飛べば、陥没したところに突っ込むことは回避できそうです。
8. トランスフォーム機能
台風や嵐の中、トラックを走らせるのはとても危険です。ただ、オールシーズンタイヤで滑りやすい道路の危険は減り、レーダーで視界不良による危険も減っています。
しかし、台風や嵐による危険は道路と視界だけではありません。強風という強敵もいます。
トラックは車体が大きいので風の影響を受けやすく、強風にハンドルを取られて事故を起こす可能性もあります。そして強風にはレーダーもオールシーズンタイヤも飛行装置もあまり役に立ちそうにありません。
そこで、トラックにトランスフォーム機能を搭載します。トラックを倒したり、ハンドルを取られそうな強風が吹き荒れるときは、風の影響を緩和できる形状にトランスフォームするのです。思い切り重心を低くするのも良いですし、風が吹き抜けるような構造になるのもアリなのではないでしょうか。
9. 危機意識
いろいろな装備が開発され、トラックに装備されれば、交通事故ゼロの念願もかなうはずです。
ただ、一番大切なのは、そして最も「これがあれば」と望まれるのは、「絶対に交通事故は起こさない」というドライバーの強い意識です。それをゆめゆめ忘れることなかれ、です。
10. 衝突時車体軟化装置
それでも交通事故がゼロにならないなら、せめて交通事故による被害をできる限り少なくするものを開発しましょう。
トラックは、たくさんのものを安全に運び、もちろんドライバーの安全も守るために頑丈にできています。そのため、トラックは大きくて硬いわけです。大きくて硬いので、ぶつかると相手に大きな被害を与えます。
そこで、衝突したときに車体が軟化する装置を装備します。要するに、トラックが何かと衝突する直前、車体がふにゃふにゃに柔らかくなるようにするわけです。もちろん、ドライバーは安全という前提です。
今回の装備の中では、これが一番SFかもしれません。