技術者の飽くなきチャレンジ精神と、トラックドライバーの人手不足という問題が相まって、トラックの自動運転システムの開発が進められています。トラックドライバーが足りないなら、自動運転システム、すなわちAIにトラックを運転してもらおうということです。
トラックドライバーに代わってトラックを運転してくれるAIが完成すれば、人間のトラックドライバーは必要なくなり、トラックドライバーは失業するんじゃね、と危惧する声も聞こえます。
問題解決の手段が新しい問題を生み出すとしたら、本末転倒のような気もしますが、何かを思いつく人というのは大体後先を考えないもので、人間の歴史は案外、そんなように紡がれてきたのかもしれません。
1. 絶対に無事故無違反を貫く
自動運転システムが完成しても、その日を境に、一斉にトラックドライバーに成り代わってAIがトラックを運転するようにはならないでしょう。
新しいシステムの導入にはお金がかかりますが、仮に補助金などが用意されても、すべての運送会社がすぐに準備できるはずはありませんし、運送会社の経営者も「しばらくは様子見」という人が多いかもしれません。
さて、トラックドライバーにも「AIに仕事を取られてたまるか」という意地があります。自動運転システムの実現の一番のハードルは「無事故無違反」でしょうから、トラックドライバーも無事故無違反を貫き、意地を見せるしかありません。
それで時代の流れが変わるわけではありませんが、気は晴れるでしょう。
2. 運転以外の仕事に尽力する
トラックドライバーの仕事の大半はトラックの運転ですが、仕事はトラックの運転だけではありません。
宅配便のドライバーは荷を届け先まで運び、荷によっては直接手渡しして伝票に印を押してもらうか、サインしてもらう必要があります。
そういう作業はAIにはできません。
自動運転システムが普及しても、結局は人が同乗する仕事は残るでしょう。同乗するからには、いざというときに運転できるよう、中型や大型の運転免許所持者が必要になるかもしれません。
トラックドライバーはトラックの運転をしなくても良いので、仕事が随分と楽になり、その分、給料が減る可能性があります。
「自動運転システムは誰のためのシステムなのだろうか」と考えてしまいますが、もちろん、トラックドライバーのためのシステムではないことは明らかです。
3. 愛想を振りまく
自動運転システムが普及すると、トラックドライバーは「ただトラックに乗っているだけの存在」になります。
それで給料が下がらないよう、経営者はトラックドライバーに「トラックの運転」以外の仕事を担当させるかもしれません。例えば営業です。
今もセールスドライバーという仕事では、ドライバーが営業も兼任しつつトラックを運転していますが、ほかのあらゆるトラックドライバーの仕事も、営業を兼任するようになるわけです。
営業ですから、企画の提案力などが必要とされます。
それから愛想も。
4. 運転テクニックに磨きをかける
トラックドライバーの中には、当然「トラックを運転できないならやってる意味ない」と、トラックドライバーをスッパリ辞めて転職する人もいるでしょう。
しかし、中にはどうしても「トラックを運転する仕事」が好きで、完全に自動運転システムを導入しない会社でトラックの運転を続けるトラックドライバーもいるはずです。
そんな人は「自動運転システムに負けてたまるか」という意気込みから、運転テクニックに磨きをかけ、腕をドンドン上げていくに違いありません。
5. 人間国宝を目指す
今の若い人は、あまり自動車の運転免許を取得しないそうです。
自動運転システムが普及し、自動運転トラックが街を走る光景が「普通の日常」になるころには、車を運転できる人は希少な存在になっているでしょう。
トラックドライバーとしてトラックの運転を続けてきた人は、今で言う「伝統技能を受け継ぐ職人」レベルになります。人間国宝も夢ではないはずです。
6. AIの知識を持つ
トラックドライバーを続け、トラック職人になる人がいる一方で、自動運転システム搭載トラックで仕事を続ける人も当然いるはずです。
AIだって故障したり、機能に不具合が生じることがあります。
自動運転トラック同乗ドライバーは、AIの知識を持ち、仕事中に何か不具合を発見したら、直ちに修復します。
そんな未来が来るかもしれません。
7. トラック整備の技能を持つ
自動運転トラック同乗ドライバーはAIの不具合を修復するだけではありません。不具合はトラックにも生じる可能性があります。
自動運転トラック同乗ドライバーはトラック整備の技能を持ち、仕事中に何か不具合を発見したら、JAFを呼ぶことなく、自ら直ちに修復します。
8. 独立起業も考える
トラックドライバーとして人間国宝にでもなれば、弟子入り志願がやって来るかもしれません。もはや従業員としてトラックドライバーの仕事を続ける段階ではないのかもしれません。独立起業して、職人的技能としてのトラックドライバーの仕事の伝承に努めましょう。
また、AIの知識とトラック整備の技能を身に着けたトラックドライバーのところにも、弟子入り志願がやって来るかもしれません。弟子と言うか「雇ってほしい」志願者ですね。
9. 飲んだくれる
職人的トラックドライバーも目指さず、AIとトラック整備に長けたハイブリッドドライバーも目指さなかったトラックドライバーの中には、トラックに同乗して荷役作業などをしつつ、営業も兼任してみますが、なかなか営業成績が伸びず、給料が下がっていくばかり、なんて人もいるかもしれません。
飲んだくれるしかありません。勤務日に酒が残っていたとしても、運転するわけではありませんから平気です。
10. 投票に行く
若いころからトラックドライバーとしてバリバリ働いた人も、自動運転トラックが「当たり前の日常」として普及しているころには、もう立派な高齢者になっているかもしれません。
高齢者ということは、本来は無理して仕事をしなくても悠々自適な生活を送れるようになっているはずです。「はず」ではなく、そういう社会にするのがすべての政治家が当然すべき、やって当たり前の責務です。
そんな政治家を選ぶため、きちんと選挙に行って投票しましょう。
最後に
トラックドライバーを失業させるとは、恐るべき自動運転システムです。でもご安心ください。このお話は遠い遠い未来の物語なのです。え? なぜですって? 我々人類は今、人から仕事を奪うほど高度なAIを生み出せる技能を持っていませんから。