トラックドライバーの仕事の大半はトラックを運転することです。それも通常は1人で行います。
そんなわけで、トラックドライバーの仕事のメリットとして「わずらわしい人間関係がないこと」が挙げられます。
これは事実です。大企業のビジネスマンなら、何かのプロジェクトを進めるのもチームで当たりますし、作業を進めるにも1つ1つ上司の決裁を仰がなければいけません。同僚ともうまく協調しなければいけません。
政治家がよく、他の政党の議員などに対して「筋を通していない」なんて怒って、その提案を拒否することがあります。提案の中身ではなく、進め方に「怒っている」ために拒否するわけです。つまり、仕事を進めるに当たり、感情に流されて合理的に判断していないわけです。とても文明人とは思えませんが、そういうことって、あらゆる業界、あらゆる企業でも同じようなものではないでしょうか。その根幹にあるのが、人間関係です。
一方、トラックドライバーは、目的地に行くのに、左折するか右折するかでイチイチ上司にお伺いは立てません。ドライバーの判断に任されています。ハンドルに置いた手が10時10分の位置じゃなかったからと言って、誰にもとやかく言われません。
大企業では、仕事のストレスではやはり「人間関係によるストレス」がかなり大きな比重を占めます。トラックドライバーにも仕事上のストレスはありますが、それは交通事故のリスクだったり、長時間勤務だったり、腰痛がひどいことだったりで、人間関係によるストレスは少ないと言えます。
トラックドライバーは「人間関係によるストレスは少ない」? そう、ゼロではありません。
もちろん、トラックドライバーにも仕事上の人間関係があるわけです。経済活動の中で仕事をする以上、どんな人間ともつながっていないということはありません。そこに人間関係が構築されます。
そして人間関係があれば、人によってはそこにストレスを感じることもあります。ぶっちゃけ、どんな些細な人間関係にもストレスを感じる人だっているかもしれないのですから。
逆に、上司の圧がすごく、同僚の足の引っ張りも絶え間がなく、後輩の面倒を見るのも大変で、クライアントはすべて気難しいというビジネスマンだって、その本人の神経がムチャクチャ太く、一切ストレスに感じていないこともある、かもしれません。
何をストレスに感じるかは、やはり人それぞれです。
それはともなく、トラックドライバーにも人間関係があります。そこにストレスが生まれるかどうかは、やはり「合う」「合わない」があるでしょう。ただ、避けられるストレスなら、できるだけ避けたり、減らしたほうが仕事もスムーズにいきます。
ストレスを避けるには、例えば、あまり気にしないことです。存在してしまっている人間関係なので、それを無いことにするのは難しいものです。せめて「合わない人」とは極力距離を置くなどしましょう。
もし、どうしても強くストレスを感じるなら、会社を辞めて他の会社を探すほうが良いかもしれません。運が良ければ、次の会社では「合わない人」と出会わないかもしれません。
もしくは「自分」を変えてみるのも1つの手段です。「自分」が変わると、案外相手も変わり、「合う」と思えるかも。
同僚ドライバー
同じ会社には他にもトラックドライバーがいるはずです。
会社の規模が大きければ大勢のトラックドライバーを抱えています。大勢のトラックドライバーがいると、かえって他のトラックドライバーとはそれほど深い付き合いにはならないかもしれません。
逆に、規模の小さい会社は人間関係も濃密になります。中にはアットホームな会社もあって、それをうっとうしく感じてしまうとストレスにもなるでしょう。
とは言え、通常は他のトラックドライバーとそれほど接することはありません。
ただ、入社して最初のころは先輩ドライバーのトラックで先輩の横に乗り、仕事を教えてもらうことが多いです。うまく付き合えば、仕事のコツも教えてくれたり、日ごろからいろいろな情報も教えてくれるので、とてもありがたい存在になります。
逆に、自分が経験を積むと、後輩に仕事を教えることもあるかもしれません。責任を持ってしっかり教えれば、相手も熱心に学んで、これまたその先、心強い味方になってくれるでしょう。
そういった関係のない同僚ドライバーとも、良い関係を構築しておけば、渋滞情報とか取引先の担当者とうまく付き合う方法とか教えてくれたり教えたり、いろいろ助け合える存在になります。
経営者
規模が大きな会社であれば、経営者、つまり社長とはあまり接することもないでしょう。しかし、大きな会社であれば、部署の長は大きな存在です。
これが小さな会社なら、もちろん経営者と接する機会も出てきます。
経営者や部署の長は、見ていないようで従業員のことをしっかり見ています。経営者や部署の長に気に入られなければ給与が上がらないかも、なんてこともあるかもしれません。しかし、人間的に気に入られるかどうかより、やはり自分の仕事をきちんと遂行することが肝心です。
ただ、経営者や部署の長とは、トラックドライバーの仕事の責任者です。普段は、給料日や休暇申請のOKをもらうときくらいしかありがたみも感じないかもしれませんが、仕事上で何か大きなトラブルがあったとき、責任を取ったり、ドライバーを助けてくれるのは、やはり経営者や部署の長です。普段は「ウチの社長はしょうがないなあ」なんてボヤいていても、いざとなったら感謝する、そんな関係だと良いですね。
社内の事務
小さい会社でも、普通は会社に事務職がいます。経理、総務などのスタッフです。
特に経理の人は、経費の精算なんかもしれくれるのでとても重要です。ひと昔前なら、ちょっと経費として通りにくいものでも、仲良くなっておけば「仕方ないわねえ」なんて言って通してくれたとかくれないとか。
また、営業職がいる会社であれば、その営業職との関係は大切です。営業は得意先と現場、つまりトラックドライバーとの橋渡しをする存在です。得意先からの要望をドライバーに伝えてくれるので、ドライバーはそれをきちんと受け取らないと、仕事がやりにくくなるかもしれません。
逆に、ドライバーからの要望も営業が取引先に伝えてくれて、仕事がやりやすくなるかもしれません。
配車担当
運送会社の中で、トラックドライバーの仕事を左右する重要なポジションにいるのが配車担当です。トラックドライバーに仕事を割り振るのですから。
配車担当が、それぞれのトラックドライバーの得手不得手や好み、人柄などを把握していて、効率的に仕事を割り振ると、会社全体として仕事がとてもうまく進みます。
他社のドライバー
トラックドライバーは、同じ会社のトラックドライバーと接する機会もそれほど多くはないので、ましてや他社のドライバーと接することもあまりありません。
しかし、ゼロではありません。例えば、県ごとのトラック協会主催のイベントで出会うかもしれません。それより身近なところでは、仕事の合間に休憩する場所には、他社のトラックドライバーも集まるので、そこでも知り合う機会が生まれます。
また、いくつかの運送会社を渡り歩いて、いろいろなトラックドライバーの知り合いができた先輩ドライバーが、ドライバー仲間を集めた飲み会にでも呼んでくれたら、そこで一気に交流の輪は広がります。
他社のドライバーは、自社ドライバーが知らないような有意義な情報をもたらしてくれるかもしれません。
荷主
荷主は、トラックドライバーが運ぶ荷の持ち主です。会社にとっては得意先、顧客になります。
とは言え、トラックドライバーが付き合うのは、その得意先である会社の中の担当者という、1人の人間です。
そして荷主の中には、たまに運送会社に無茶を強いてくるところもあります。この無茶を実行するのはトラックドライバーです。
それでも荷主は、会社にとっては「お得意様」なので、トラックドライバーも逆らうことが難しいものです。こうしてトラックドライバーの仕事は「過酷」と言われるようになりました。
それで近年、行政の旗振りでトラックドライバーの労働環境の改善が進められ、それは荷主にも及ぶようになってきました。
荷の届け先
例えば、食品メーカーの商品を工場から倉庫に運ぶ場合、食品メーカーが荷主になったりします。
一方、宅配便の荷物を運ぶトラックドライバーが荷を届けるのは個人宅や会社などになりますが、この場合、その届け先はいわば荷主で、やはり何かしらのやり取りがあります。
企業や店舗の荷主のように、トラックドライバーにとって仕事上の人間関係として重くストレスをかけてくることはないかもしれませんが、例えば、不在がちな個人宅などは別のストレスを生みます。
その一方、個人宅でも会社でも、通販などで「欲しかったもの」を届けてくれるのがドライバーなので、中には荷を受け取って「ごくろうさま」「ありがとう」なんて声を掛けてくれることもあります。
暑い盛りの真夏なら、親切な人が冷たいお茶でも出してくれるかもしれません。「よし、仕事を頑張ろう!」という気にもなります。
最後に
トラックドライバーの仕事の大半はトラックを運転することです。
それでも、全く誰とも接しないわけではありません。長距離の仕事であれば、長時間、誰とも会わないでひたすら運転を続けることもありますが、荷の届け先では誰かが待っています。
まして、ルート配送ドライバーやセールスドライバーは、毎日のように多くの人と接することになります。
いずれにしても、社会人としてのマナーを守り、どんな人にも明るく、ハキハキとあいさつしましょう。あいさつが人間関係の出発点です。それができれば、多くの人間関係はうまくいきます。
あいさつが苦手という人もいるでしょう。アナウンサーのような明るい発声のあいさつができれば、それに越したことはありませんが、できないからと言って苦手意識を持つことはありません。相手に敬意を持ってあいさつをすれば、必ずきちんと伝わります。