人生にストレスはつきものです。
ストレスの全くない人はいないでしょう。
ただ、個人差はあります。全く同じ状況に置かれた人間でも、その人のもともとの性格などによって、強いストレスを感じる人もいれば、あまりストレスを意識しない人もいます。
また、ストレスにもいろいろな種類があります。代表的なストレスと言えば、人間関係のストレスです。職場の上司が苦手だったり、同僚と一緒にいると疲れる、後輩に対していつもイライラしてしまうといったことは、それほど珍しくはありません。同じ職場内の人間関係が良好でも、取引先の担当者と相性が悪いと、これもかなり大きなストレスになります。
一方、トラック運転手は「人間関係によるストレスが少ない職業」と言われています。
しかし、人生にストレスはつきものです。ストレスの全くない仕事なんてないのです。「人間関係によるストレスが少ない」としても、まだ他のストレスがあるので油断はできません。
1. 交通事故のリスク
トラック運転手に限らず、あらゆるドライバーが常にさらさているのが「いつ交通事故に巻き込まれるかもしれん」もしくは「いつ交通事故を起こしてしまうかもしれん」ことによるストレスです。
「俺様は抜群のドライブテクニックを持っているので、交通事故なんかに巻き込まれるわけもないし、ましてや交通事故を起こすわけもない」なんて思っている人が一番ヤブナイです。ヤブナイってのは「危なくてヤバい」ってことです。
道路上は常に危険がいっぱいです。道路を走っているのは自分の車だけではありません。他の車が予想外の動きをするかもしれませんし、バイク、自転車は本当に厄介ですし、歩行者が横断歩道でもないのにいきなり道路を横断するかもしれません。
それだけではなく、雨や風などの天候によっても危険度は違ってきます。
さらに、自分なりのルールを決めているような「俺様」な運転をしていることで「あおり運転」「危険運転」をしてしまうと、交通事故のリスクは急上昇です。
2. 時間厳守
トラック運転手の仕事では、荷を届ける時間が決められています。ある程度、余裕のあるスケジュールなら良いのですが、これがきつかったりすると「遅れたらまずい」というストレスが重くのしかかってきます。
もともとスケジュールには余裕があったはずなのに、荷積みに予想以上に時間がかかったとか、途中で道に迷ったとかのミスで、気が付いたらギリギリのスケジュールになっていた、なんてこともあります。特に新人のときはそういうことが起こりがちです。
遅刻するとペナルティを課せられることもあったりして、この「遅れたらまずい」のストレスは、学生時代の「寝坊した! 遅刻する」での「廊下に立たされるかも」のストレスなんて吹き飛ぶほどです。
3. 荷の安全
世間ではトラック運転手に対して「荒くれ者」のイメージがあり、「運転が荒っぽい」などと信じて疑わない向きもあるようですが、実際はトラック運転手ほどていねいでおだやかな運転をする人はいないかもしれないくらいです。
と言うのも、トラック運転手は荷を安全に運ばなければいけないからです。運んでいる途中で荷が損傷したりしたら、トラック運転手自身が弁償しなければいけないケースもあるので、そりゃもうていねいになります。
そのため、急ブレーキや急発進、急な加速、急なハンドル操作はできません。これをしないように、常に気をつけて運転しているわけですから、結構なストレスです。
そんなことを知らない他のドライバーから軽くあおられたり、急に割り込まれたり、クラクションを鳴らされたりしたらたまりません。
4. 渋滞
車は本来、人力では出せないスピードを出して好きなところへ行ける乗り物です。スピードと自由なところに爽快感があるのです。
これを阻害されると、仕事で車を運転していようが、プライベートで運転していようが、かなりのストレスになります。「こうしたい」「こうあるべき」と頭に思い浮かべる自分と現実とのギャップが離れているほど、ストレスとなるのです。他には例えば「眠たいのに眠れない」とか。
車を運転するスピードと自由を阻害されてついやってしまうのが「あおり運転」です。
それはともかく、車を運転するスピードと自由を阻害する要因の1つが渋滞です。
トラック運転手であれば、スピードと自由の阻害もそうですが、渋滞によって「遅刻するかも」という恐怖が倍増されて大きなストレスになります。
5. 相性の悪い荷主
トラック運転手は「人間関係によるストレスが少ない職業」と言われていますが、全くないわけではありません。代表例が荷主との相性が悪い場合です。
荷主はトラック運転手が勤務する会社にとって「お得意様」なので、理不尽なことを言われても強く反発できません。あからさまに逆らったりしません。
また、日本にはどういうわけか、サービスを受けて対価を払う側はサービスを提供する側に横柄な態度だったり、威張り散らしても良いというような風潮が根付いています。本来は対等であるはずなのに、オカシナ話です。
荷主の担当者があまりにも理不尽であれば、トラック運転手も1人で抱えて悩まず、上司に相談して会社としてきちんと対応してもらいましょう。
6. 相性の悪い配車担当
対人関係の相性は社外だけではなく社内にもあります。
トラック運転手はあまり同僚と一緒に長く過ごすことはありませんが、こじれると厄介なのが配車担当者との関係です。配車担当者はトラック運転手に仕事を割り振る担当なので、きちんとトラック運転手の適性に応じて仕事を割り振ってくれれば良いのですが、そこに個人的な感情が入ると面倒です。
とは言え、トラック運転手は人手不足が続き、求人を出している会社は多いので、今の会社の仕事に不満が強ければ、他の会社を探したほうがいいかもしれません。
7. 腰痛
トラック運転手の「車を運転する上での爽快感」であるスピードと自由を阻害してしまうものの1つに、運転手自身の体調不良があります。ハンドルを握っていて、体のどこかが痛かったりしては、爽快感に身をゆだねることなんてできませんから。
そんなトラック運転手の職業病と言えるのが腰痛です。
トラック運転手は仕事の大半をトラックの運転に費やしますが、長時間、運転席で同じ姿勢を続けることで血行不良となり、腰痛になると言われています。
人間、やはり腰が肝心で、腰に力が入らないといざというときに瞬発力も出ません。これは結構なストレスです。
8. 長時間の拘束
トラック運転手の仕事にはいろいろな種類がありますが、トラック運転手と聞いてすぐにイメージするのは長距離トラックの運転かもしれません。
そして長距離トラックの運転手の仕事が過酷だと言われる要因になっているのが、拘束時間の長さです。何しろ、一度仕事で家を出ると2日~3日、長くて1週間くらいは家に帰れません。
自分のベッドで眠ることもできず、自宅の自分の部屋に並べたガンプラを眺めることもできないのです。これはかなりのストレスです。
まさしく「自分のベッドで眠りたい」「並べたガンプラを眺めたい」という願望と現実とのギャップによるストレスです。
9. 荷待ち時間
トラック運転手の拘束時間を長くしている要因の1つが荷待ち時間です。
荷を時間通りに届けたはいいが、前のトラックの荷下ろしが終わっていないのでそれを待つ時間や、渋滞を避けて深夜にトラックを走らせ、届け先に明け方到着し、そこの営業が始まるまで待つ時間です。
ここのところ、トラック運転手の人手不足を解消するため、トラック運転手の労働環境を改善していこうという取り組みが行政の旗振りによって始まっています。こうしたムダに思える荷待ち時間も減らす傾向にありますが、なかなかすぐにはうまくできないようです。
10. 孤独感
トラック運転手は「人間関係によるストレスが少ない職業」と言われています。トラック運転手は基本的に1人で仕事をするからです。仕事中、運転席の隣には上司も同僚もお得意様もいません。
このことで逆に孤独感にさいなまされるトラック運転手もいるかもしれません。職場に同僚がいれば、愚痴をこぼしたり、他愛ない雑談をすることもできますが、トラック運転手はふと誰かに何かをしゃべりたくなっても、聞いてくれる相手はいませんから。
在宅勤務が増えた時期、普段は職場で同僚に囲まれて仕事していた人たちが、在宅での仕事で周囲に誰もいなくなったことで孤立感がストレスになったようですが、トラック運転手は日常が孤立感で満たされています。
最後に
人生にストレスはつきものです。ストレスの全くない仕事なんてないのです。
それでも「人間関係によるストレスが少ない」分、トラック運転手は他の職業に比べてマシかもしれません。