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タクシードライバーの仕事に役立つ接客術

快適

タクシードライバーの仕事は接客業でもあります。
タクシー車内という、それほど広くない密室空間で、タクシードライバーはお客さんと1対1、マン・ツー・マン、2人きり、2人ぼっちになることも珍しくありません。タクシードライバーにはそれだけ濃密な接客術が求められます。
そしてタクシードライバーに求められる接客とは「いかにお客さんに快適に目的地まで過ごしてもらうか」です。「安全、迅速に目的地まで運ぶ」のは、もちろん言うまでもありません。
この「安全に、迅速に、快適にお客さんを目的地まで運ぶ」ことは、タクシードライバーの仕事としては「できて当たり前」な、基本中の基本です。タクシーを利用するお客さんは、タクシードライバーが当然そういうサービスを提供してくれるものと思っています。
その期待を裏切ってはいけません。
とは言え、それがなかなか難しいのも事実です。「分かっちゃいるけど」というヤツです。「失言したい」と思っている政治家なんて誰もいないはずなのに、どんな政治家も必ずと言っていいほど失言してしまうのと同じようなことかもしれません。
しかし、失言しないように心掛けるべきポイントがあるように、タクシードライバーの接客にも「押さえておくべきポイント」があり、これを押さえておけば、高確率で「当たり前」な接客ができる、はずです。
そして、お客さんに快適に過ごしてもらえると、こんなに快適に過ごせるなら、次もこの人のタクシーに乗ろうとお客さんに思わせることができ、そんなお客さんが常連になってくれるかもしれなかったりと、妄想も膨らみます。この際ですから、常連になってくれたらイイナ!と期待しちゃいましょう。

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1. 笑顔

タクシードライバーへの不満としてよく挙がるのが「不愛想だった」というものです。タクシードライバーの仕事は接客業でもあるのに「不愛想」なんて、もってのほかです。
愛想よくするには笑顔が欠かせません。
だからと言って、満面の笑みを浮かべる必要はありません。タクシーに乗って、運転席から振り返ったタクシードライバーが満面の笑みだったら、お客さんのほうも意味が分からず恐怖を感じます。怯えます。
薄ら笑いや皮肉な笑みもNGです。人の表情はその人その人特有のものであり、千差万別なので、鏡を見ながら「ちょうどいい笑み」を試してみましょう。「ちょうどいい笑み」とは、見た人を不快にしない、安心させる笑みです。
もちろん「笑顔が大事」と言っても、それはお客さんと接するときだけですよ。運転中は運転に集中しなければ事故のもとです。

ほどよい笑顔の1例

2. 話しかけない

ここで言う「話しかけない」とは「むやみに不要なことを話しかけない」ということです。「どこまでですか?」など、話しかけなければいけないこともタクシードライバーにはあります。
タクシーを利用するお客さんはほとんどの人が、タクシー車内では静かに過ごしたいと思っています。たまには「タクシードライバーと会話したい」というお客さんもいますが、「たまに」です。

話しかけない

3. 聞き上手

タクシードライバーの仕事は接客業だとは言っても、お客さんを飽きさせないトークが必要なわけではありません。大事なのは、上手に話を聞くことです。
タクシードライバーには業務上、お客さんから話を聞かなければいけないことがあります。目的地です。もちろん、普通に「どちらまでですか?」などと質問すればいいわけですが、このときも努めて愛想よく質問すると、お客さんに好印象を与えます。好印象は大事です。
中にはタクシードライバーと会話したいお客さんもいます。会話と言うか、そういうお客さんはむしろ話を聞いてほしいと思って、タクシードライバーに話しかけたりします。
もちろん、タクシードライバーに興味を持って、いろいろ質問してくるお客さんがいれば、簡潔に、しかも愛想よく答えることは必要です。
それはそれとして、「話したい」お客さんの話をきちんと聞くことに専念すると、お客さんはとても心地良くなります。お客さんの発言に対して自分なりの意見を言いたくなっても、それをさりげなく言うくらいは良いですが、ムキになって主張してはいけません。
タクシードライバーはあくまでも聞き役に徹しましょう。
しかし、基本的に多くのお客さんが「タクシー車内では静かに過ごしたい」と思っていることを忘れずに。

耳を傾ける

4. 感謝

タクシードライバーが目的地を聞く前に、まず最初にお客さんに話しかけるべき言葉があります。「ご乗車ありがとうございます」です。もちろん、ほどよい笑顔を添えて、です。
「ご乗車ありがとうございます」を言うだけではありません。お客さんには常に感謝の気持ちを持ちましょう。お客さんのおかげで仕事が成り立つのですから。
この際ですから、あらゆることに感謝の気持ちを持ちましょう。会社の経営者、同僚、家族、友人、知人、隣人、そしてこの世のすべての事柄、モノにも感謝の気持ちを持つのです。多分、今より少し、世の中が平和になります。

感謝

5. 敬語

タクシーを利用するお客さんは基本的に静かに過ごしたい人が多いのですが、そうは言っても、タクシードライバーは最初のあいさつだけではなく、目的地を聞いたり、精算したり、お客さんと言葉を交わすことが必ずあります。そんなときは当然ですが、敬語を使います。
ここで言う敬語は、社会人としてごく基本的なマナーに沿ったものです。日本の敬語はいろいろ複雑なので、知らずに使って間違った使い方をしてしまうのも危険です。シンプルに「ていねいに話す」ことを心掛ければ、うまく伝わるはずです。
そして、話すときは基本は「ほどよい笑顔」で、ゆっくりでいいので明るく、はっきりと話しましょう。無愛想にモゴモゴ話しては、お客さんにもちゃんと伝わりませんし、お客さんは不快に感じます。
また、タクシードライバーと会話したいお客さんとの会話が盛り上がったとしても、なるべくタメ口は避けましょう。

基本的なビジネスマナーが必要

6. 観察

タクシーを利用するお客さんは基本的に静かに過ごしたい人が多く、タクシードライバーはむやみにお客さんに話しかけないことが基本です。
しかし、例えば「エアコンが効き過ぎていないですか」などの細かい心遣いも必要です。
注意深くお客さんを観察し、お客さんの状態を把握し、お客さんが「エアコンの設定温度を少し上げてください」と言い出す前に「効き過ぎていないですか」と聞けるようになると良いですね。
この場合、気を回して「寒いようですからエアコンの設定、少し上げますね」と言って設定を上げてしまうより、「効き過ぎていないですか」心遣いを見せたほうが良いです。勝手に判断して設定温度を上げてしまうと、このタクシードライバーはお客さんの気持ちを優先していないと思われかねません。

よく観察することが肝心

7. 運転

接客は態度や言動だけで行うものではありません。タクシードライバーが提供するサービスそのものが「心地良い」ものでなければなりません。「運転」もその1つです。
タクシードライバーはお客さんに快適に過ごしてもらうために、ていねいな運転を心掛けます。急ブレーキ、急発進、急なハンドル操作は避け、たとえお客さんがマッチョな成人男性でも、あたかも赤ちゃんをゆりかごで運ぶような運転をしましょう。

仕事の本分は運転

8. 車内を清潔にする

車内環境も、タクシードライバーが提供するサービスの1つとして「快適に過ごしてもらう」接客の要素です。
ゴミやホコリがあってはなりません。お客さんが降りるごとに消毒もします。
酔ったお客さんが吐いたりしたら、もちろん念入りに掃除します。痕跡を残してはいけません。
目に見える汚れだけではなく、臭いにも気をつけましょう。嫌な臭いがするようではお客さんが不快に感じますし、だからと言って芳香剤のようなものを使うのも避けたほうがいいかもしれません。香りにも好みがありますから、その香りを苦手と思うお客さんがいるかもしれません。

徹底的に清潔に

9. 身なりを清潔にする

清潔にしなければいけないのは車内環境だけではありません。もちろん、車体そのものもピカピカしておくべきですが、車だけではなく、タクシードライバー自身の身なりも清潔でなければいけません。
この場合も、汚れ、臭いをともに気をつけましょう。
髪型などは会社にも規定などがあるかもしれません。仮に規定内だからと、無頓着でいるより、やはりお客さんに快適なタクシーと思ってもらえるような風体にしておくのが、真に接客のプロと言えるのではないでしょうか。

清潔に

10. 敬意を払う

タクシードライバーの仕事は接客業でもあるので、お客さんに対してへりくだった態度で接します。だからと言ってそれは、自分を卑下することではありません。タクシードライバーは接客のプロとして、敬意を払ってお客さんに親切ていねいな態度で接するのです。
タクシードライバーとしての接客のポイントはいろいろありますが、まずは心の底からお客さんに快適に過ごしてほしいと願い、後部座席で気持ち良さそうにしているお客さんを見ることを自分の喜びと思い、1人のお客さんがタクシーを降りるたびに「次のお客さんにはもっと快適に過ごしてもらおう」と考え続けましょう。
そして、どんなお客さんに対しても、そう考え続ける気持ちを忘れずに、敬意を持って接するのです。
お客さんの中には、タクシードライバーを見下したり、高圧的な態度を取る人もいます。そんなお客さんにも、同じように敬意を払って接します。もしかしたら、お客さんの態度にタクシードライバーとして嫌な気持ちになることがあるかもしれませんが、だからと言ってお客さんを嫌な気持ちにさせようと思ってはいけません。
それはタクシードライバーの地位が低いからではありません。接客のプロとして誇りを持っているからです。だから、どんなお客さんをも快適に過ごしてもらう努力を続けるのです。

誇りを持って

最後に

タクシードライバーの仕事は接客業ですが、お笑い芸人のような流暢なトークは必要ありません。
と言うものの、流暢なトークができれば、武器にはなります。トーク力でお客さんを楽しい気分にさせることができれば、こんなに楽しい気分になれるなら、次もこの人のタクシーに乗ろうとお客さんが思い、常連客になってくれるかもしれませんから。
ただ、多くのお客さんがタクシー車内では静かに過ごしたいと思っており、たまにいる「タクシードライバーと会話したいお客さん」も、タクシードライバーの話を聞くのではなく、タクシードライバーに自分の話を聞いてほしいという人が多いので、タクシードライバーが華麗なトークで常連客をゲットするチャンスは、それほど多くはないでしょう。

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