昔は「男は敷居をまたげば7人の敵あり」なんてことを言いました。
武士が二本差しで街を闊歩していた時代の話です。しかし、スーツを着たビジネスマンにも苦難は多く、それをたとえるときにもこう言われました。
トラックドライバーもいろいろな苦難にぶち当たります。トラックドライバーにも「7人の敵あり」なわけですが、物事にはすべて2つの面があるもので、敵がいれば当然味方もいます。
そしてこれはトラックドライバーに限ったことではありません。恐らく、どの職業の人にも当てはまります。
しかし、誰かに味方になってもらうには、その本人にも「可愛がられる要素」がなくてはいけません。
日ごろから好き勝手しておいて、困ったときだけ「助けて!」では、そりゃ味方も離れていきます。
「可愛がられる要素」がないと、本来、味方になってくれる立場なのに放っておかれてしまいます。「敵」に遭遇したら、ダメージを低くしたり、ダメージを避けるための対策が必要になりますが、同じように「味方」を「味方」にしておくための方策も必要なのです。
「味方」を「味方」にしておくための方策は、相手や状況、環境によっていろいろあるはずですが、大雑把に言うと素直でいることと感謝の気持ちを持つことです。
1. 同僚
トラックドライバーとして勤める会社の先輩、同輩、後輩、つまりドライバー仲間や、配車担当、経理、事務、総務ら、すべての同僚たちとは本来、利害関係が一致しているはずです。味方にしておくに越したことはありません。もちろん上司もです。
ドライバー仲間は仕事を進めるのに有益は情報をくれます。配車担当と仲良くなっておけば、自分がやりたい仕事を優先的に回してくれるかもしれません。
味方にするというのは、この場合、妥当な言い方ではないかもしれません。仲間になりましょう。
日ごろから、同僚は積極的に助けたり、問題があれば相談に乗っておくことです。お互い様という関係をつくっておきましょう。
2. 法律
あらゆる労働者は法律で守られています。あらゆる国民の権利は法律で守られています。
トラックドライバーの労働環境も、それにまつわる条例が追加されたり、改正されたりして整備が進んでいると言います。こうした法整備に関する正しい情報をきちんと入手して、会社に対しても言うべきことはきんと言いましょう。正しい情報が自分自身を守るための強い味方になってくれます。
法には慈悲がなくていけません。
3. 協会
トラックドライバーの労働者としての権利を守る法的な正しい情報は、トラック協会も発信しています。
トラック業界には全日本トラック協会があり、各都道府県ごとにも傘下の協会が置かれています。ひと言で言うと、トラック業界の発展のための事業を展開しています。
事業者に対して助成金の申請をサポートしてくれたり、ドライバー研修を行ったりします。フォークリフト運転資格取得の講習の案内などもしています。
ちなみに会員は事業者ですが、もちろん個人事業主も含まれるようです。そして会社の従業員であるトラックドライバーも、協会主催のドライバーコンテストなどに参加できます。
4. 労働組合
労働者の権利を守ってくれるのが労働組合です。労働者によって構成され、労働者が労働者の権利を守るために経営者側といろいろな交渉をしてくれます。
大きな会社であれば、必ずあるはずです。
トラック運送業の事業者は零細企業も多く、労働組合のない事業所も多いです。しかし、そんな労働者のためにプレカリアートユニオンという組織があります。
プレカリアートとは、不安定な労働者という意味の造語だそうで、不安定雇用でも過酷な勤務を強いられる正社員でも、職場や雇用形態や年齢を問わず加入できるそうです。
また、個人事業主として働くドライバーも、個人事業主のために労務や労災などをサポートしてくれる商工関係の組合が、全国にあります。
5. 同業他社
トラックドライバーにとってありがたい情報をもたらしてくれるのは、同僚ドライバーだけではありません。他社のトラックドライバーも、同業者として心強い仲間になってくれます。
昭和の昔なら無線でいろいろなドライバーとつながったと言います。
もちろん、今も無線で交流するのも良いでしょう。スマホも大いに活用できます。
有益な情報のやり取りだけではなく、趣味の話で盛り上がるのも良いです。トラックドライバーは1人で仕事をするのが基本なので、仲間の存在はありがたいものです。
6. 家族
何にせよ、家族を味方にしないで、他に誰が味方になってくれると言うのでしょう。
家族が健康で、安心して暮らせるからこそ、自分も健康、安心でいられるのです。
自分自身が家族を理解し、家族のために行動してこそ、家族も理解してくれます。味方になってくれます。
まさに「1人は皆のために。皆は1人のために」です。
特に長距離の仕事をしているドライバーは、何日も家を留守にすることになり、家族の理解や協力が欠かせません。
ただ、「家族のために働いてやっている」といったおごった気持ちがあるなら、そんなものはきっぱり捨ててください。
7. 運
どんな仕事でも、より良い成果をもたらすための工夫と、それを続ける努力が必要です。どんな仕事でも、この工夫と努力を怠ると、より良い成果は期待できません。
しかし、ときとして人間の手の及ばないところで、人生を左右する事態が起こったりします。自然災害などがそうです。もちろん、自然災害もあらゆる被害を想定し、備えることは必要ですが、今のところの科学力では災害そのもの避けることは難しいようです。
それはともかく、トラックドライバーにとって厄介な渋滞も、避けるための方策はいろいろありますが、それをいろいろやってみても、どうしても渋滞にハマってしまうことだってあります。
これはもう「運」としか言いようがありません。
くどいようですが、いろいろ方策を試すことは必要です。それでも最終的にそれがうまくいくかどうかは、なかなか人の力だけではどうにもならないことだってあるのです。
すなわち「人事を尽くして天命を待つ」です。
ただ、より良い「運」を引き寄せるのも自分次第です。
8. 自分自身
トラックドライバーが絶対に守らなければいけないのは安全運転です。
安全運転にとって、感情に流されたり、油断してしまいがちな「弱い自分」は大きな「敵」となります。
逆に言うと、感情に流されない、油断しないで安全運転意識を常に持ち続ける「強い自分」こそ、長くトラックドライバーの仕事を続ける上での最大の味方なのです。
それに、最終的には自身の人生の責任は、自分自身で負わなければいけないのです。