トラックマン

トラック専門サイト

ホワイト物流推進運動について

f:id:truck_sa:20200203133042j:plain
ホワイト

トラック運転手は長らく「低収入で過酷な仕事」というイメージが広まり、人手不足が続いています。
トラック運転手が激減しているわけです。運転手がいなければトラックは1ミリも動きません。いや、力持ちが何人かで押せば数センチくらいは動くかもしれませんが、そういうコトではないのです。
中国地方や九州地方では雑誌・書籍の発売日が1日遅れることになりました。
また、食料品などの値上げも始まっています。食料品などが全国に届くのはトラックで運ばれるからであり、これまたトラック運転手が減れば、物流費用も高くならざるを得ないわけです。もちろん、原材料費の価格上昇などもあり、原因は運転手不足だけではないのですが、運転手不足が原因の1つになっていることは事実のようです。
「引っ越し難民」という言葉も登場しました。サラリーマンの転勤は3月に集中します。異動になった場合、新しい配属先での仕事が4月から始まるので、それまでに引っ越すからです。地方の高校を卒業して4月から都会の大学に通い始める学生たちも、同じ時期に引っ越します。合わせると、3月に膨大な引っ越しが行われることになります。
この引っ越しにもトラックが使われるので、当然運転手不足が影響します。運転手は少ないのに利用者が集中していつもより増加するので、引っ越し会社も対応できず、引っ越し先が決まっているのにも関わらず、引っ越しできないわけです。この「引っ越しできない」人々「引っ越し難民」です。
こうした「運転者不足による国民生活への影響」が実際に現れている現状に、国土交通省、経済産業省、農林水産省の3省が連携して始めたのが「ホワイト物流推進運動」です。

トラック運転手不足の背景

1. 若者の減少

トラック運転手の減少によって、トラックを使った物流サービスが縮小されたり、物流費の上昇が起こり、国民にとって不便になってきているので、それを解消するには「トラック運転手の増加」が効果的な手段となります。
というわけで、行政としても必死に「なぜトラック運転手は減少しているのでしょうか?」を考えたのでしょう。原因が分かれば対処法が見つかるのですから。
トラック運転手のなり手が減っているのは、まず、とりあえず職業に就こうと考える若者自体が減っていることが挙げられます。これが少子化です。つまり、人手不足はトラック運転手だけではなく、いろいろな業界で起きています。そしてトラック運転手も「例外ではない」のです。
ただ、少なくなった若者があえてトラック運転手になろうとしない理由もあります。

f:id:truck_sa:20200203133518j:plain
若者たち

2. 魅力の減少

少なくなったとはいえ、トラック運転手はまだ絶滅危惧種になったわけではありません。ただ、妊婦を邪険に扱うような言動が横行したり、職場にマタハラやセクハラが存在したりすると、確実に日本人は絶滅危惧種になりますよ。
それはそれとして、とにかく、若者がトラック運転手になろうとしないのはそれだけトラック運転手の仕事に魅力を感じていないからです。冒頭に書いたように、トラック運転手は「低収入で過酷な仕事」というイメージが広まっているので、そんなイメージを鵜呑みにすればトラック運転手になろうとする若者も減ります。
現代はYouTuberなんて職業が人気を得て、多くの子どもたちが「楽そう」だと言って憧れたりします。現代社会はいろいろなことが便利になり、いろいろ楽できるように発達したので、子どもたちも「このまま楽して一生過ごせるかも」と考えてしまうのかもしれません。

f:id:truck_sa:20200124130745p:plain
人気職業「YouTuber」

3. トラック運転手の実態

ただ、実際のトラック運転手は年収の平均が400万円台、月収の平均は30万円台です。昭和のように年収1千万円も稼げたころとは違うようですし、豪勢な贅沢暮らしはできないかもしれませんが、一般的なサラリーマンと比べて大げさに安いわけでもないのです。
大学院まで行って博士号まで取得したのに、大学の非常勤講師を兼任して年収200万円台なんて高学歴者もいると言いますから、トラック運転手はきちんと働けば決して「低所得者」ではないと言えます。

f:id:truck_sa:20191227141451j:plain
やればやっただけ稼げる

4. 労働環境

それでも「低収入で過酷」と言われるのがトラック運転手です。つまり、過酷な労働環境に収入が見合っていない職場が存在するわけです。
もちろんすべての職場がそうなのではありません。しかし、人は一部を見て全体を「そうだ」と判断してしまいがちなので、トラック運転手すべてが「過酷過ぎる」と思われています。
この「過酷さ」に収入が見合っているかは別として「過酷」なことには違いがありません。
その要因としては「荷の積み下ろしが手作業」「荷の届け先での待ち時間が長い」「荷の届け先で契約以外の作業をさせられる」などがあります。

f:id:truck_sa:20191206122424j:plain
過酷

5. ブラックな労働環境による弊害

トラック運転手の仕事には確かに過酷な面があります。まあ、あらゆる職業に過酷な面というものはあるものですが、過酷さゆえに人手不足以外の弊害も起こっています。
仕事が過酷なのでトラック運転手の疲労がたまり、それによって運転時の判断ミス、ときには精神的な不安定からあおり運転、睡眠不足からの居眠り運転などで交通事故が起きたりしています。
さらに、こうした事故のニュースが「やはりトラック運転手の仕事は過酷なんだ」というイメージをさらに広めてしまっています。

f:id:truck_sa:20200203133855j:plain
ブラック

運動の2本の大きな柱

そんなわけで、トラック運転手の労働環境の改善が、トラック運転手の人手不足を解消するのに有効な手段だということになりました。人手不足の改善だけではなく、交通事故の防止にも役立ちますしね。
それで「ホワイト物流推進運動」では「トラック輸送の生産性向上と物流の効率化」「女性や60代以上も働きやすいホワイトな労働環境の実現」を2本柱として打ち出しました。
「トラック輸送の生産性向上と物流の効率化」はトラック運転手という仕事の魅力をアピールすることになるかもしれないって発想ですね。
もう1つの「女性や60代以上も働きやすいホワイトな労働環境の実現」は、若い男性だけを当てにしていてもなんなんで、ということでしょう。

f:id:truck_sa:20200203134054j:plain
2本の柱

1. トラック輸送の生産性向上と物流の効率化

具体的には、こんな取り組みが求められています。
納品先で荷の積み下ろし作業が集中し、そのためトラック運転手の待機時間が長くなってしまう問題があります。それで、効率的に荷の積み下ろしができ、待ち時間を減らせるよう、荷の予約受付システムを導入するという取り組みです。部外者からすると「え? 導入してなかったの」ということが驚きです。
また、1200個ほどの段ボール箱をトラック運転手が手作業で荷積み・荷下ろしを行っていたところがあるようです。これもフォークリフトなどの機械化で、ずいぶんと効率化できます。
こうしたアナログな作業をずっと続けてきた背景には、物流業界が大きな資本を持たない中小・零細企業によって成り立ってきたという問題があるかもしれません。これはどの業界も同じで、日本経済、日本社会は中小・零細企業が支えています。そして中小・零細企業は人手不足や資金不足で、なかなか作業を進化させている余裕がなかったりします。
「ホワイト物流推進運動」も、せっかく3つ省が連携しているのですから、中小・零細企業の効率化にも行政によるゆるぎない支援を期待したいものです。

f:id:truck_sa:20191003132814j:plain
ITによる効率化

2. 女性や60代以上も働きやすいホワイトな労働環境の実現

女性にとって

若い男性にトラック運転手のなり手がいないなら、男性以外の女性、若くない高齢者からなり手を募ろうということです。
もともと社会は「外で働くのは男性」というように役割が決められていました。そうではなく、誰でもどんな職業にも就く自由や権利があるんで、職場のほうも「どんな人にも働きやすい環境にしよう」というのがダイバーシティ、多様性の推進です。これは近年、あらゆる職場、企業で取り組まれています。
女性の社会進出が話題になり始めたのは、恐らく1970年代です。それからもう50年近く経っているのですが、世の中にはまだ古い価値観に固執した男性たちもいるようで「女性が働きやすい職場」の実現には意識改革も必要とされています。
加えて、男性と女性には身体的な違いもやはりあります。今まで男性しかいなかった職場で女性が働くとなると、更衣室やトイレも女性用に新設しなければいけません。
しかし、こうした「女性が働きやすい職場の実現」への取り組みは、企業が「きちんと従業員のことを考えている」アピールにもなり、結果、男性従業員の増加にもつながります。
ただ、これも力の弱い中小・零細企業には難しいかもしれないので、行政の支援が期待されます。

f:id:truck_sa:20201002143252j:plain
女性ドライバー


高齢者問題

少子高齢化で高齢者が増えているなら、その高齢者にもどんどん働いてもらおうという動きは、いろいろな企業で見られます。
昭和30年代は55歳が定年でしたが、今は60歳が定年で、これを65歳まで引き上げた企業もあります。実際、60代にはまだまだ元気な人が多く、働きたい意欲にもあふれています。また、この世知辛い世の中、年金だけでは生活していけないので働かざるをえないという切実な問題もあります。70歳定年なんてものもそのうち登場する勢いです。
こうしたわけで、トラック運転手も60歳で定年になった後も再雇用で働き続けてもらおうということになりました。
ただ、高齢者がトラック運転手として仕事を続けるに当たり、高齢者による交通事故が目立つようになってきた「高齢者問題」があります。高齢者は判断力や筋力などが低下してくるので、これが交通事故を起こす原因になるのです。これはこれでまた議論が必要です。
本来は、どんな職業でも、誰でも60代になれば、引退したい人は引退して悠々自適に暮らせる社会の実現が、政治家の果たすべき最低限の責任なんですけどね。

f:id:truck_sa:20190627124734j:plain
シニアドライバー


私たちにできること

「ホワイト物流推進運動」はトラック業界だけに向けてのものではありません。物流の恩恵に浴するすべての人々に「できること」があります。
例えば「引っ越し難民」の問題では、企業が人材の異動を4月だけに行うのではなく、分散させればいいのです。そうすれば「3月は引っ越しトラックの仕事がとても過酷」という状況は改善されます。
個人にも「できること」はあります。個人がモロにトラック輸送の恩恵を受けるのは、宅配便の荷物を受け取るときですが、時間指定した荷物なら、ちゃんとその時間に受け取るようにするのです。トラック運転手の再配達の手間が少なくなり、かなり過酷さが改善されます。
コンビニ受け取りや運送会社の営業所受け取りを利用するのも手です。通販ではなるべくまとめ買いをするのが良いです。
それにSA、PA、道の駅、コンビニなどで大型車の駐車スペースに普通自動車や軽自動車を停めるのは止めましょう。大型車の駐車スペースがないと、トラック運転手がきちんと休憩できなくなり、余計な過酷さを被り、それで交通事故を起こす危険も増えます。

f:id:truck_sa:20190912144558j:plain
荷物はきちんと受け取ろう

最後に

「ホワイト物流推進運動」はトラック運転手不足を解消する一助にはなるはずです。それどころか、日本社会の平和にもつながるはずです。明るい未来のため、理解と協力が求められています。

f:id:truck_sa:20190819134334j:plain
ホワイトreprise