トラックマン

トラック専門サイト

トラックドライバーの不思議

f:id:truck_sa:20210823130331j:plain
芝生

「他人の芝生は青く見える」なんて言うことわざがあります。「自分にはないけど、他人が持っているものはよく見えてしまう」といった意味です。
「うらやましい」というねたむ気持ちでしょうか。ただ、そうやってうらやんでも、実際に手に入れてみると、それほど自分にとって良いものでもなかったりします。
やはり厄介なのは「ねたみ」「やっかみ」です。
本当に自分が欲しかったものなのか分からないのは、想像力が足りないからかもしれません。人はなかなか「他人の立場」を察することができません。
違う職業、例えばトラックドライバーの人たちがなぜ、あういう行動を取るのかも「不思議」だと感じてしまいます。

1. なぜ路上駐車するのか

まだ薄暗い明け方近くから、比較的工場などに近い産業道路で、トラックが長い行列をつくって路上駐車していることがあります。住宅街でも同様の光景が見られることがあります。
そんな光景を見て「やはりトラックドライバーなんてのはマナーを守らない荒くれ者ばかりなのだ」と思ってしまう人は多いでしょう。
決して路上駐車を擁護するつもりはありませんが、ただ、トラックドライバーにも路上駐車したくないのにせざるを得ない、やむにやまれぬ事情があるのです。
トラックドライバーは荷の届け先に遅く到着することが許されないだけではなく、早く着くこともできません。また、例え時間ピッタリに着いても、自分のトラックより前に着いたトラックが荷を下ろし終わらなければ、待機していないといけないのです。しかも、届け先の会社などの敷地内には待機場所がなく「敷地外の近くで待っていて」と言われてしまいます。
そのため、仕方なく路上駐車するしかないのです。
「あんなところで路上駐車して邪魔だ」と怒る気持ちも分かります。しかし、その怒りはトラックドライバーではなく、トラックドライバーに路上駐車を強いる企業や、そうした環境を改善しようとしない行政に向けましょう。

f:id:truck_sa:20210823131345j:plain
路駐

2. なぜ荒くれ者と思われるのか

トラックドライバーは「ルールやマナーを守らない荒くれ者」というマイナスイメージで見られがちです。
路上駐車しているトラックを見ると、どうしても「ルールやマナーを無視する」と思ってしまうのかもしれません。
もしかしたら昭和の名作映画「トラック野郎」シリーズのイメージがいまだに残っているとも考えられます。主人公はダボシャツ、腹巻の典型的なチンピラスタイルでしたから。
また、ほとんどのトラックドライバーが真面目で紳士的なのですが、ごくごく一部、どんな職業の中にも一定数存在する、ルールやマナーを無視する荒くれ者を見てしまった人が、その印象を広めてしまっているのかもしれません。

f:id:truck_sa:20210315124921j:plain
荒くれ者?

3. なぜ深夜に走るのか

深夜の国道を走るトラックは多いです。
国道のような主要道路は、昼間は渋滞になりがちですから、荷を届ける時間を厳守しなければならないトラックドライバーは、渋滞を避けるために深夜、トラックを走らせることが多くなります。
また、早朝に届けてほしい、例えばスーパーに並べる生鮮食品などは、早朝に間に合うように深夜、荷を運ぶことになります。

f:id:truck_sa:20210823132018j:plain
夜のトラック

4. なぜ国道に多いのか

国道など、主要道路ではトラックをよく見ます。
主要道路沿いには大型店舗や商業施設が多いので、そこに荷を運ぶトラックも多くなります。
また、主要道路は各市、各県をつないでいるので、そうしたところに荷を運ぶ中距離、長距離のトラックも多くなります。工業団地を結ぶ主要道路も、工場に荷を運ぶトラックが多く利用します。

f:id:truck_sa:20210823132712j:plain
幹線道路

5. なぜ人手不足なのか

トラックドライバーはこのところ人手不足になっています。
原因の1つには少子高齢化があります。少子高齢化によって若い人が少なくなっているので、人手不足はあらゆる業界で起こっているわけです。
さらに、少なくなった若い人は「なるべく楽してたくさん稼げる仕事」を目指すので、イメージとして「キツイ仕事」と思われがちなトラックドライバー、タクシードライバー、建設業界、製造業界、小売業界などは、内情をよく知りもしない若者たちがなかなか集まりにくくなっているのです。

f:id:truck_sa:20210823132931j:plain
建築業界

6. なぜ仕事がキツイのか

トラックドライバーの仕事は「長時間労働で過酷」と言われがちです。
実際は、何を過酷と思うかどうか、個人差もあるので一概に「過酷」「キツイ」と決めつけることはできないのが現実です。
ただ、確かに「キツイ」と思われる要素もあります。例えば長距離の仕事では、一旦会社を出ると2~3日、長いと1週間は戻れないこともあります。その間はトラック車内で寝泊まりすることになります。
毎日家に帰って眠りたいと考える人にとっては、かなり「キツイ」と言えるでしょう。
また、長距離の仕事ではなくても、運転席に座ってトラックを運転している時間が長いことに変わりはありません。トラックに限らず車の運転を苦痛に感じる人には…、いえ、そもそもそういう人はトラックドライバーにはならないでしょうね。
車の運転が好きだという人でも、長時間運転席で同じ姿勢で過ごすことで、腰痛肩こりになりやすくなってしまいます。これまた「キツイ」です。

f:id:truck_sa:20200827130730j:plain
運転

7. なぜエンジンを切らないのか

トラックの路上駐車を見掛けた人が「路上駐車はまだ良いとして、せめてエンジンくらいは切ってほしい」なんて思うことがあります。
しかし、夏なら冷房、冬なら暖房をかけないと、トラックドライバーも健康を損ねるばかりか、最悪に関わります。多くの車のエアコンはエンジンと連動しているので、エンジンを切るわけにはいかないわけです。
また、冷凍車冷蔵車の場合もエンジンと冷凍機能、冷蔵機能が連動しているものがあり、荷を守るためにはエンジンを切ることができません。

f:id:truck_sa:20210823133620j:plain
冷凍食品

8. なぜ昔より収入が減ったのか

トラックドライバーの平均年収は約450万円だそうです。日本人全体の平均年収とほぼ同じくらいのようです。
しかし、昭和の昔を知るトラックドライバーはたいてい「昔はもっと良かった」と言うそうです。年収1000万円も珍しくなかったとか。
日本全体で貧困化が進んでいるという人もいますし、トラックドライバーの収入が減ったことにも諸説あります。
例えば、昔はコンプライアンス無視でトラックドライバーも無理な仕事をこなし、収入を増やしていたが、今は労働環境の改善が進み、ホワイトな企業が増えたため、法令内で仕事をすることになって収入が伸びなくなった、なんて言う人もいます。
また、1990年に法改正があり、トラック輸送の業界への参入が容易になって業者が増えたため、価格競争が起こって輸送費が激減し、トラックドライバーの人件費も減ることになったという説もあります。もしそうなら、これは明らかに政治家の失策だと言えるでしょう。

f:id:truck_sa:20191227141451j:plain
以前は今よりたくさん稼げた

9. なぜ転職するのか

仕事が「キツイ」と思われがちで、収入も「減って昔ほど稼げなくなった」と言われるトラックドライバーですが、そのトラックドライバーに転職する人はまだまだいます。
トラックドライバーが人手不足に陥っていることで就職のハードルが下がり、年齢や職歴、それにもちろん学歴にも関係なく、トラックドライバーになりやすくなったため、とも言われています。
また、「仕事は基本的に1人で気楽」「昔ほどではないにしろ、やればやっただけ稼げる歩合制」といったメリットに気付いた人が、トラックドライバーへの転職を考えるからかもしれません。

f:id:truck_sa:20210430115556j:plain
「気付いたぜ」