タクシー運転手の給与は歩合制であることが多く、やればやっただけ稼げるし、やらなきゃそれほど稼げない仕事となっています。
また、運転免許を持っていない人たちの便利な「足」となっているタクシーを運転する仕事は、社会になくてはならない大切な仕事でもあります。
そんなタクシー運転手の素晴らしさに気付いた人が、タクシー運転手に転職して幸せに暮らしています。その中には、一流大学を卒業しないと入社できないような一流企業から転職した人もいるはずです。
中には、仕事で「やらかしちゃって」会社にいられなくなり、泣く泣く転職した人もいるでしょう。
しかし、それだけではないはずです。
1. 人と直接触れ合いたくなった
パソコンの普及で、人は生身の人と直接触れ合う機会が減りました。
人と会うのが仕事だったはずの営業職でも、仕事の連絡はメールやチャット、ラインで済みますし、会議や打ち合わせなんかもパソコン画面を通じて行う時代です。
効率は良くなりましたが、仕事にいわゆる人間味が薄れたのも事実。
「その分、仕事が早く終わるんだから良かったじゃん」という人は転職したりしません。
しかし、「人間味が薄れて寒々と感じるようになった」と思う人は転職を考えます。そして、いろいろな人とじかに接する接客業でもあるタクシー運転手に転職するのです。
2. 「おもてなし」の仕事に興味が湧いた
2020年の東京オリンピック開催が決まったときに一瞬流行しかけたのが「お・も・て・な・し」です。流行に敏感な人たちは、自分たちも誰かを「おもてなし」しようと躍起になりました。
そんな「おもてなし」を流行とは関係なく、年中心掛けているのがタクシー運転手です。タクシー運転手こそ「おもてなし」の体現者、伝道者と言っても過言ではありません。
無機質なオフィスで粛々と日々の業務をこなしながら、やれビッグプロジェクトだ何億動くだの言われながら、ストレスをためて過ごすビジネスマンが、人と心の交流を持ちつつ「おもてなし」の仕事をしたくなっても、何の不思議もありません。
3. 組織の歯車から抜け出したかった
一流企業は給与は高額ですが、自由はありません。
社内では常に上司や同僚の目が光り、何かあれば個人の評判は社員食堂を通じ、請負の掃除業者スタッフの知るところともなります。
何をするにも上司の決裁が必要で、何枚もの申請書を作成し、了承を得られるまで待たなければなりません。上司は「自発的に考え、行動しろ」とは言いますが、無断で行動したら「わきまえろ!」と叱ります。理不尽ですが、世の中はそんなもんです。
一流企業の社員なんていわゆる「組織の歯車」です。窮屈です。
しかし、タクシー運転手は、乗客を安全に、迅速に、快適に目的地まで届けさえすれば、他のことは自由です。目的地までの道も、自分で「こっちが早い」と判断してそのルートを選択できます。自分で決められます。
組織の歯車となって行動しているうち「どうせ自分で考えて行動しても上司に立案すれば上司やチームの手柄になっちまう。何にもしないほうがよっぽどいいや」なんて思考に陥り、無機質なオフィスで粛々と日々の業務をこなしながら、やれビッグプロジェクトだ何億動くだの言われながら、ストレスためて過ごすビジネスマンとなってしまうわけです。
ふと「自由がほしい」と思うと、自然とタクシー運転手の求人をチェックしてしまうのかもしれません。
4. マーケティング力を試したかった
タクシー運転手の仕事は「組織の歯車」ではありません。自分でこうと思ったやり方を試し、そのデータから次の戦術を考え、さらにその試行錯誤を繰り返すことで売り上げを伸ばし、収入を増やしていきます。
大切なのは情報収集と分析力です。その積み重ねを続ける持久力です。
いわば、タクシー運転手としてたくさん稼ぐにはマーケティング力が必要なのです。
大会社でマーケティングを行っても、大会社は部署が細分化されていますので、マーケティング結果から成果を生み出すのは別の部署です。また、マーケティング自体も他のスタッフが持ち寄った作業結果の総合的なものになったりします。
これでは、どこまでが自分の実力なのか、分かりにくいことおびただしいというものです。
しかし、タクシー運転手はほとんど個人事業主のような仕事ですから、何でも自分1人で行い、その結果も自分1人で活用し、自分1人で成果を享受します。
5. 職歴も学歴も関係ない実力を発揮したかった
今は大企業でも年功序列型を見直し、実力主義的な給与体系にしていこうという議論が起こっています。
議論が起こっているということは、実際はまだまだ年功序列型だということです。
そんな中では「あの先輩社員は俺より仕事がデキないのに、俺より先に入ったからというだけで俺より給料が良い。そんなバカな話があるか!」なんて憤っている人もいるに違いありません。
また、学歴でも給与に差があります。高卒より大卒のほうが、在職歴は短くても給料が良いわけです。
しかし、タクシー会社の多くが職歴や学歴は不問です。給与は歩合制であることが多く、歩合制では純然たる実力主義になります。
マジでおのれの実力だけで勝負したいと考える多くの人が、タクシー運転手に転職します。
6. 起業する資金を貯めたかった
世の中には、大企業でビジネスマンとして経験を積むうち、自ら起業したいと考えるようになる、骨のある若者もいます。
起業資金を貯めるのに、タクシー運転手はちょうど良いです。
タクシー運転手として稼ぐにはマーケティングが必要で、働き方は個人事業主のようでもあり、しかも隔日勤務という特殊な勤務形態によって、たくさん稼ぎながらたくさんの休日を得ることもできるからです。
隔日勤務は早朝から翌朝まで約20時間勤務し、翌日は丸1日休み、そうした勤務を月に12日間ほどこなし、18日間ほどは休日となります。
このたくさんある休みを利用して、起業の準備を進めることができるのです。
7. 楽そうだった
人は「車の運転」をとても軽く考えます。誰でもやっているからです。
しかも「簡単」と考えがちです。それだけ気軽に車を運転しつつ、しかも自分は運転技術が優れているなんて思っていたりします。
そのため、タクシー運転手の仕事を「運転するだけで金を稼げる簡単な仕事」と考えてしまいます。
日々、仕事の重圧にさらされ、専門用語が飛び交う巨大なプロジェクトの1人として、面白味はないものの難しさだけはハイレベルな仕事に携わっているビジネスマンはふと「もっと楽な仕事ないかなあ」なんて考えてしまいます。
8. 生涯現役でいたかった
昭和30年代には55歳が定年でしたが、今は60歳が一般的な定年となりました。65歳まで定年を延長する企業も出始めています。
医療の進化によって人の寿命は延び、90歳も決して珍しくない時代です。
しかし、年功序列型の企業では、社員は年齢を重ねると課長、部長と昇進し、現場でバリバリ働くより、部下の指導、育成、書類へのハンコ押しが主な仕事になっていきます。
加齢とともにそんな自らを受け入れる人が多いのですが、中には「指導や人材育成のためにこの会社に入ったんじゃない」と、不満を募らせる、いつまでも気持ちの若い人だっています。
一方、タクシー業界に昇進はありません。若くても努力と工夫次第でベテランのように稼げますし、またベテランだからと言って後進の指導に明け暮れるわけではありません。
ベテランのタクシー運転手は、それまで培ったノウハウを駆使して、いよいよ自分の思い通りに稼いでいたりします。
9. 働きながらも休みがほしかった
タクシー運転手には隔日勤務という特殊な勤務形態があります。
タクシー運転手にとって終電が終わるころの時間は稼ぎどきになるのですが、隔日勤務のタクシー運転手は昼間のタクシー利用者で売り上げを伸ばした上に、この終電を逃した人たちのおかげでさらに稼ぐことができるのです。
そのため、多くのタクシー運転手がこの隔日勤務という勤務を選択します。
一方、隔日勤務では毎月12日間くらいが勤務で、残り18日間くらいが休みなります。
たっぷり勤務してたっぷり稼ぎつつ、たっぷり休みを満喫できるわけです。
しかし、一流企業のビジネスマンともなれば、仕事の量は半端なく、今は働き方改革とやらで残業は少なくなったものの仕事量が減ったわけではないので、仕事を家まで持ち帰り、遅めの夕食の後、寝るまでのリラックスタイムを仕事に費やし、休日だって家で仕事するありさまです。
そりゃ、タクシー運転手に転職したくなるでしょう。
10. 車の運転が好きだった
一流企業のビジネスマンは、無機質なオフィスで粛々と日々の業務をこなしながら、やれビッグプロジェクトだ何億動くだの言われながら、ストレスためて過ごします。働き方改革とやらで残業は少なくなったものの仕事量が減ったわけではないので、仕事を家まで持ち帰り、遅めの夕食の後、寝るまでのリラックスタイムを仕事に費やし、休日だって家で仕事するありさまです。
そんな日々を送るうち、ふと「俺、何をやっているんだろう」と気がつきます。こんな生活を送るために生まれたの?
突然、会社を辞めて自分探しの旅に出掛けたりします。しかし、インドに観光旅行に行ったくらいで「本当の自分」が見つかるわけはありません。
答えは自分の中にあるのですから。
いろいろあって「俺って、車の運転が好きだったよな」なんて気がついた人が、タクシー運転手になったりするのかもしれません。